明けましておめでとうございます。
正月はいつも興味のある発明のこと(発明の歴史・方法論など)を考えます。
今の発明の方法論としては、@昔ながらの個人の頭の中のヒラメキ(特にトイレや風呂に入っているときなど)、Aブレーンストーミングなどによる集団発明、BTRIZ(トゥリーズ)などの発明支援装置の利用などが代表的なものだと思います。
改良発明では上記AやBもかなり有効と思います。
最近は、一部の大手企業や中小企業がブレーンストーミングで発明を創出して商品化の予定がなくてもとりあえず出願するという動きもあるようですが、それは、つまり、企業が主婦などの個人発明家と同じような動きをしている(発明会社のような活動をしている)ということになりますね。
今から100年少し前の19世紀後半はエジソンやライト兄弟などの町の発明家が大活躍していた時代なんですよね。
あの頃は、まだ科学よりも技術がずっと先を走っていた時代で、ベンツ(3輪自動車・1885年)、ダイムラー(4輪自動車・1886年)、ベル(電話機・1876年)、エジソン(蓄音機・1877年。電灯・1879年)、ライト兄弟(有人動力飛行・1903年)など、当時活躍した発明家のほとんどは、大組織の人間ではなく科学者でもない町の技術者で、ライト兄弟などは小さな自転車屋をやりながら試行錯誤で飛行機を作っていた訳です。
それが、科学が技術を先導する「科学技術」の時代に徐々に変わって行き、今、社会的意味のある発明のほとんどは大企業や大学の研究所から生まれており、町の発明家の時代はとうの昔に終わったと言われるのは、確かにそうなんでしょう。
ただ、これからは、安価な3Dスキャナーや3Dプリンタの普及などで個人でも気軽にハード・メーカーになれる時代になる(クリス・アンダーソン著「MAKERS」)ということからは、また少し違った方向に進む可能性もあるのではと思います。
2013年01月02日
明けましておめでとうございます(発明の歴史など)
2012年12月12日
上杉隆氏による名誉毀損裁判で池田信夫氏はかなり苦しい展開か?
上杉隆氏の記事が読売新聞の記事の盗用だとブログなどで記載したことが名誉毀損に当たるとして、上杉隆氏が池田信夫氏などを相手に慰謝料や謝罪広告などを求めた訴訟が話題になっているようです。
私は、この件は池田信夫氏のブログくらいしか見ていないのですが、私には、このブログを見ているだけで池田氏の苦しい立場が伝わってきます(そのように読まない人の方がむしろ多いとは思いますが)。
したがって原告は「出口が無断複製したことを上杉は知らなかった」と主張するしかないが、これが事実なら上杉の記事は明白な著作権侵害である。きのうの記事でも説明したように、たとえ彼が善意の第三者であっても著作権侵害=盗用になるのだ。しかし、「著作権侵害=盗用」ではないでしょう。
「上杉氏が(故意または過失で)著作権侵害をした」と書いただけなら、虚偽の事実の摘示ではないということで逃げ切れたのではと思います(上杉氏は公人なので真実なら事実を摘示しても適法)。
しかし、「上杉氏が盗用した」と書いている場合、虚偽の事実の摘示により上杉氏の名誉を侵害したと判断される可能性も出てくるのではないでしょうか(もちろん盗用が虚偽だとしても盗用が真実だと誤信した理由があったなら適法です)。
一般人は、「盗用」という言葉からは、故意による著作権侵害の場合だと理解するだろうと思うので。
2012年11月17日
Chikirinさんに学ぶ?商標出願の活用法
Chikirinの日記で有名なChikirinさん(今まで顔も本名も経歴も秘密にしていた)が、第41類の役務「知識の教授,セミナーの企画・・・」について「Chikirin」という商標を本名で(まぁ当たり前ですが)出願して登録させていたらしい(商標登録第5521211号)というのが話題になっていますね(例えばこちら)。
最近、伊賀泰代(元マッキンゼーの採用マネジャー)という本名で「採用基準」という本を出版されていて、ちょうど商標出願が登録される時期(通常は出願から約半年で登録されます)がこの本が出版される少し前のタイミングだったので、当初から商標登録をステマに使おうと仕組んだのではないかという見方が有力のようです(ステマというのは正確ではないですが、自分の本名を、自分ではばらさないで特許庁により公開される商標登録を通して世間で自然にバレるように仕向けて話題作りを狙ったという点でステマ的と言えます)。
私は、商標出願をこのようにステマ目的を含めて行うことは特に問題ないと思います。ステマだけが100%の目的(商標を使用する予定が全くない)なら商標法の建前に反していると一応は言えますが、「将来的に使用する可能性もある」のなら問題はないといえます。
むしろ、さすがChikirinさんとも思いますが、ステマではないかと疑われてしまった点からは戦略的にどうだったか微妙ともいえるでしょうね。
とにかく商標出願は、所詮、ビジネスのツールですので、ステマだろうが何だろうがうまく使っていくという発想は大切ではないでしょうか。
私の経験でも、新しいキャラクタの絵(著作物)を制作したけども自分が最初に創作したと証明する手段が欲しいと相談されたとき、(将来的に使用する可能性もあるということで)商標出願を勧めたことがあります。商標登録になれば、キャラクタも自分の氏名も出願日も特許庁が商標公報に掲載しネットでも公開しますので、自分がそのキャラクタを最初に創作したことを簡単に証明できます。他に、文化庁への著作権登録とか公証人役場などの方法もありますが、商標出願は手続的にも証明の方法としても一番お手軽と思います。
ビジネスモデル特許出願にしても、他の分野と異なって特許率は10%以下と低いですが、仮に特許になる可能性が低くても、特にIT分野はスピード勝負なので話題作りを先行させるなどの狙いから調査が粗い段階でも急いで出願することは少なくないと思います。
2012年09月29日
ネットで「モノ」をダウンロードする時代?
今日の日経新聞に出てた記事ですが、米メーカーのスリーディー・システムズが今年2月に3次元(3D)プリンター「Cube」を約10万円で発売し、利用者が設計した造形物のデータを有償・無償でダウンロードできる仕組みも整えたとありました。
こうなると、3Dプリンターを購入した一般家庭が3Dデータをネットからダウンロードするだけで、スマホケースなどの小物を自宅で製作(3D印刷)することもできるということです。
3D印刷の材料を樹脂でなく混練した食材などにすれば、蒲鉾などの魚肉練り製品などでも、3Dデータを入力するだけで、ドラエモンの顔など自分の好きな形に、自宅で簡単に作れてしまいます。
そのうち、スマートフォン向けアプリ開発で生計を立てている個人や小企業と同じように、食品や小物の3Dデータを制作・販売して生計を立てようとする人も出てくるかもしれませんね。
2012年09月25日
「赤い靴底」のトレードドレスと特許出願
「赤い靴底」は商標 仏ブランドの主張認める 2012/9/6付けSankeiBiz
あでやかな赤い靴底で有名なフランスの靴ブランド「クリスチャン・ルブタン」が、靴底に赤い色を用いるデザインを同社独自の商標と認めるよう主張していた裁判で、ニューヨークの連邦高裁は5日、商標と認める判断を示した。(中略)ただし商標と認められるのは靴底だけが赤く、他の部分が別の色でコントラストがある場合に限るとした。靴底と他の部分の色の対比が制作者の独自性と判断した。(中略)訴訟ではフランスの高級ブランド大手イブ・サンローランの全体が赤いハイヒールが、ルブタンの権利を侵害しているかどうかが争われた。判決は、赤い色が靴底のみでない場合ルブタンに認めた権利の対象にならないとし、サンローランの靴の販売継続は認めた。
※上の写真(クリスチャン・ルブタンの靴=AFP時事)は朝日新聞からの引用です。http://www.asahi.com/international/update/0906/TKY201209060240.html
2週間余り前の記事ですが、気になったことを記しておきます。
日本でも、「靴底に赤色を用いるデザイン」(商品等表示)を長年使用して周知性を獲得した場合、不正競争防止法上の保護が認められる可能性はあります(不正競争防止法2条1項1号)。
しかし、確かに米国のトレードドレス(直訳すると「商品の衣服」ですが、上記の記事中の米国の「商標」とはトレードドレスのことだろうと思います。追記:米国では商品の色彩も商標登録されますのでこの靴底の赤色も商標登録されているのかもしれません。)や日本の不正競争防止法による保護は可能だとしても、それだけでなく、さらにより強い保護の可能性を探求するなら、米国でも日本でも、斬新なアイデアだとして特許出願することも可能だったのではないでしょうか。
靴底だけを他の部分とコントラストのある赤色などの鮮やかな色とすることにより、靴底なので通常は見えないがたまたま見えたとき人の目を強く惹き付けるという視覚的ないし物理的効果(広い意味での)があると言えますので、「発明性」は認められるだろうと思います。
そして、この「赤い靴底」が開発された当時(ルブタンは1992年から赤い靴底の靴を販売開始)、まだ世の中にそのような実例も発想も無かったとしたら、「進歩性」についても認められる可能性はあるでしょう。
特に、靴底が磨り減っても「赤色」が消えないようにする工夫などを付加すれば可能性はより高くなると思いますが、そこまで限定しなくても、「靴底の材料からは通常在り得ないような赤色などの目立つ色であって靴の他の部分とは異なる色を、靴底の色としたことを特徴とする靴」というようなクレームで特許出願すれば特許が認められる可能性は相当程度あったのではと思います。
まぁあり得ないことですけど、もし当時この「赤い靴底」の話が持ち込まれたとしたら、私だったら、特許出願を勧めたでしょうね。