一般にクレームは短いほど良いというのは確かだと思います。ただ、分野によっては特に弁理士が努力しなくても必然的に短くなるクレームはあります。例えば用途発明の分野では、物質名○○と効能△△を示す「○○を含有する△△剤」とか「○○を投与することにより△△する方法」という形にすれば特許できるので、必然的に短くなります。
「牛の肉質の改善方法(霜降り肉にする方法)」の発明に関する特許第3433212号もこのパターンで、その請求項1は次のとおりです。
「牛にビタミンCを投与することにより肉の脂肪交雑等級を改善する方法。」
牛にビタミンCを投与して霜降り肉にする(牛の肉の脂肪交雑(霜降り)の等級を上げる)という発明で、極めて短くて単純な内容ですが、これだけで特許されています。
この特許のポイントは2つあって、(i)「牛にビタミンCを投与する」と(ii)「肉の脂肪交雑等級を改善する」との2つです。特許侵害だと認定するためには、(i)だけではダメで、(ii)も必要です。
だから、「お前は、霜降り肉にするためのビタミンCを牛に投与している(あるいは、霜降り肉にするための牛用のビタミン剤を販売している)ようだが、それは特許侵害だから中止しろ。」と警告しても、その相手方から「いや、オレは、牛のストレスを解消して健康を維持させるためにビタミンCを投与しているのであって、牛の霜降りの等級を上げるためにビタミンCを投与しているのではない(あるいは、牛のストレス解消用のビタミン剤を販売しているだけだ)。」と反論されると、お手上げになる可能性があります。牛に与える「飼料」には薬事法が適用されないというのがポイントです(後述)。
つまり、上記の(ii)の効用は発明の目的・作用効果に直結するものなのですが、特許侵害行為としてこの(ii)を立証できるかどうかが訴訟の勝敗の分かれ目になります。その意味では、上記の特許クレームは、確かにすごく「短い」けれども、すごく「良い特許」かというと、そうでもないとなるのかもしれません。
つまり、「良い特許」とは、「広い特許」で且つ「強い特許」である必要があるのですが、この特許クレームは極めて短いだけに「広い特許」にはなっているけれども「強い特許」とは言えないのではないか、ということです。
一般的に、用途発明では、短いクレームでもこのような限界は付きものと思います。例えば「ミノキシジルを有効成分とする育毛剤」という特許を取っていたとしても、「同じミノキシジルを有効成分とする血圧降下剤」には効力が及ばないからです。つまり、薬剤の分野において、用途発明が、事実上、強い効力を持っているように見えるのは、純粋な特許権の力によるのではなく、薬事法の力によるところが大きいのではないかと思います(成分から薬剤を製造して販売するときは必ず薬効とセットにして売り出すしかなく、また薬剤によっては医師の処方箋などが必要とされているため)。
「牛の肉質の改善方法(霜降り肉にする方法)」の発明に関する特許第3433212号もこのパターンで、その請求項1は次のとおりです。
「牛にビタミンCを投与することにより肉の脂肪交雑等級を改善する方法。」
牛にビタミンCを投与して霜降り肉にする(牛の肉の脂肪交雑(霜降り)の等級を上げる)という発明で、極めて短くて単純な内容ですが、これだけで特許されています。
この特許のポイントは2つあって、(i)「牛にビタミンCを投与する」と(ii)「肉の脂肪交雑等級を改善する」との2つです。特許侵害だと認定するためには、(i)だけではダメで、(ii)も必要です。
だから、「お前は、霜降り肉にするためのビタミンCを牛に投与している(あるいは、霜降り肉にするための牛用のビタミン剤を販売している)ようだが、それは特許侵害だから中止しろ。」と警告しても、その相手方から「いや、オレは、牛のストレスを解消して健康を維持させるためにビタミンCを投与しているのであって、牛の霜降りの等級を上げるためにビタミンCを投与しているのではない(あるいは、牛のストレス解消用のビタミン剤を販売しているだけだ)。」と反論されると、お手上げになる可能性があります。牛に与える「飼料」には薬事法が適用されないというのがポイントです(後述)。
つまり、上記の(ii)の効用は発明の目的・作用効果に直結するものなのですが、特許侵害行為としてこの(ii)を立証できるかどうかが訴訟の勝敗の分かれ目になります。その意味では、上記の特許クレームは、確かにすごく「短い」けれども、すごく「良い特許」かというと、そうでもないとなるのかもしれません。
つまり、「良い特許」とは、「広い特許」で且つ「強い特許」である必要があるのですが、この特許クレームは極めて短いだけに「広い特許」にはなっているけれども「強い特許」とは言えないのではないか、ということです。
一般的に、用途発明では、短いクレームでもこのような限界は付きものと思います。例えば「ミノキシジルを有効成分とする育毛剤」という特許を取っていたとしても、「同じミノキシジルを有効成分とする血圧降下剤」には効力が及ばないからです。つまり、薬剤の分野において、用途発明が、事実上、強い効力を持っているように見えるのは、純粋な特許権の力によるのではなく、薬事法の力によるところが大きいのではないかと思います(成分から薬剤を製造して販売するときは必ず薬効とセットにして売り出すしかなく、また薬剤によっては医師の処方箋などが必要とされているため)。