2010年09月13日

「ふらふらする揺らぎ」がヒラメキの本質

少し前の2010/8/21付け日経新聞に、「生物の本質を問う/『いいかげん』に潜む真理/ふらつく脳 創造の源」というタイトルで、大阪大学特任教授で生物物理学者の柳田敏雄さんのインタビュー記事が載っていて、印象深いものがありました。いくつか引用しておきます。
「ぶれる、ふらつく、というのは悪いことではない。生き物の根源的な特性です。」
「人間の行動もふらふらしています。無意識のうろつき、例えばあちこちに立ち寄るような動きを天上から眺めてみると、大腸菌のふらつきにそっくりです。僕らは意識とか思考とかのプロセスが、分子や化学反応とはかけ離れた高次な反応と思っているけれど、生命現象から言うと、ふらつきやゆらぎの世界の話にすぎないのです。ふらふらしていてあいまいというと『いいかげん』なように見えますが、これこそが生き物の本質なのです。」
「ふらつき具合が大きい人はものを考える時にひらめきが速い。ふらつかずに安定している人はいくらたってもひらめかないのです。」
「脳では意識が揺らいでいろいろな情報がもやもやと浮かんでは消える。このゆらぎがたまたまあるレベルを超えるとぱっとひらめく。名前が思い出せない時にひらめいたり、問題が突然解けたりする。あれも脳のふらつきがもたらす現象です。」
「人間の脳がものすごく発達して無限の能力をつけ、すべての情報を客観的に処理できるようになったら個性もなくなってしまいます。能力がないから人間に個性が出るのです。」
「創造性も脳がふらついていいかげんだから生まれる。間違って現実と異なる答えを思い浮かべ、妄想のように膨らむ。それが創造性でしょう。いいかげんだからこそ同じものをみても捉え方が違ってくる。そこが人間の面白さです。」
「生き物がふらふらしているのは小さなエネルギーで複雑なものを動かしているからです。コンピュータのような人工機械は『0』か『1』かで動くので(中略)雑音を消すためにものすごいエネルギーを使う。生き物の場合は雑音と紛れながら動くのでふらふらしているように見えるのです。」
「いまの日本は政治も経済も揺らいで不安がる人が多い。でも安定期はつまらない。揺らぎ方が大きい時こそ天才が現れたり、飛躍があったりする。悪い時代ではなくてチャンス。」

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特に、上記の「ふらつき具合が大きい人はものを考える時にひらめきが速い。ふらつかずに安定している人はいくらたってもひらめかない」、「あれ(ひらめき)も脳のふらつきがもたらす現象です」という言葉には同感しました。

多くの発明者に出会った経験から、「(脳の中が)ふらつき、安定せず、揺らぎのある人」は、より基本的・本質的な発明(パイオニア発明)をすることが多いと感じます。
しかし、「(脳の中が)ふらつき、安定せず、揺らいでいる人」の中には「偏っている人」も含まれていて、「偏っている人」の場合は、基本的・本質的な発明をしたが世の中に受け入れられない発明だったという場合も少なくありません。
また、「(脳の中が)ふらつき、安定せず、揺らいでいる人」の場合も、基本的・本質的な発明をしたが、それは既に誰かが発明した後だった(それはそれですごいことですが、進歩性などの特許要件を満たさないため特許は取れない)という場合も少なくありません。
「ふらつき、安定せず、揺らいでいる人」であることが、より基本的・本質的な発明をするための必要条件であることは確かだと思いますが、それだけでは十分ではなく、「世の中に対する洞察や友愛の精神を持っていること」が世の中に受け入れられる発明を生むために必要であり、さらに、「自分の専門知識を常にアップデートしていること」が進歩性のある先端的な発明を生むために必要、ということになるでしょう。
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posted by mkuji at 09:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 発想力