ソニーが「スマートヅラ」を特許出願。隠しカメラやバイブ、ズレセンサをカツラに内蔵 engadget日本版 2013年11月22日
「メガネ型の Google Glass や 腕時計型のスマートウォッチなどウェアラブルデバイスへの流れが加速するなか、ソニーがカツラのなかにセンサーや無線機能を仕込んだ「スマートウィッグ」の特許を出願していたことが分かりました。 (中略)
「ヅラ」に内蔵するデバイスの例として挙げられるのは、携帯への着信などを知らせるバイブレータ、GPS、頭の前後左右に設置して進む方向を示すナビゲーション用バイブレータ、カメラ、超音波センサ、物理的なスイッチを含むさまざまな方式のリモコン、モーションセンサ、圧力センサ、さらにレーザーポインタ、そして「装着した頭部とカツラの相対位置を検知するセンサ」つまりズレセンサなど。」
上図は上記事より引用
ソニーが、様々なデバイスを内蔵した「かつら」の発明を、米国特許商標庁に出願していたようです。
例えば、「かつら+センサ(カツラのズレを測定するセンサなど)」、「かつら+バイブレータ(振動で携帯電話の着信を知らせたり、前後左右の進行方向を知らせたりするもの)」、「かつら+リモコン」、「かつら+GPS受信機」、「かつら+通信機器」などのように、周知の「かつら」と周知の「センサ・バイブレータ・GPS受信機・通信機器など」とを組合せたことによるコンビネーション(組合せ)発明です。
このように、既に周知なモノ同士を組合せた場合でも、進歩性・非自明性が認められるでしょうか?
これについては、2つに場合分けして考えるべきと思います。
第1は、その「組合せの妙」が存在している場合、つまり、ただの組合せではなく「+アルファ」が入っている場合です。
以前に「腕時計と体温計の組合せ発明」(実公昭43-29993号)でも書きましたが、カツラと電子機器との単なる組合せではなく、カツラの中に体温センサや湿度センサや圧力センサなどを仕込んでおき、「それらのセンサを頭皮と接触・近接するように配置した」という構成を付加したら、その「+アルファ」により、常時、体温、汗のかき具合、ストレス、脈波、脳波などの生体情報を測定できるという作用効果が得られるようになりますので、進歩性が認められると思います。
今回の出願中の「かつら+センサ(カツラのズレを測定するセンサなど)」、「かつら+バイブレータ(振動で前後左右の進行方向を知らせるもの)」、「かつら+リモコン(例えば脳波を測定して遠隔操作するもの)」などは、この範疇に入りますので、特許が認められる可能性が高いと思います。
第2は、このような「+アルファ」がなくて、周知のモノ同士を単純に組み合わせただけ、という場合です。
この場合は、原則的に「単なる寄せ集め」と見られてしまい、進歩性が認められることは困難でしょう。
しかし、「周知のモノ同士の単なる組み合わせ」でも、その組合せが全く予想できないような意外性・斬新さを有している場合は、進歩性が認められる可能性もあると思います。
今回の出願中の「かつら+バイブレータ(振動で携帯電話の着信を知らせるもの)」、「かつら+GPS受信機」、「かつら+通信機器」などは、この範疇に入りそうですが、カツラとの組合せは全く予想できなかったと判断されれば、特許が認められるでしょうし、その可能性もかなりあると思います。
2013年11月22日
ソニーの「スマートヅラ」の特許出願
2011年04月25日
発明が生まれる理由
ノルマを課すかどうか、訓練するかどうかより前に、発明をする人たちは、誰に教わることなく発明をどんどんしていきますね。それは、本能でしょう。誰に教わらなくても自然に絵を描いてしまうのと同じように。
他方で、ノルマが課されればやるしかないでしょうが、ノルマなどが無ければ、一生の間に一度も発明をしない人も少なくないと思います。
以前にあるところでも書いたことですが、今までに多くの発明者と出会った経験から見て、独創的な発明を生み出す人たちには、他人の言うことを鵜呑みにせず自分で考える(上司や先輩から見ると可愛いげが無い)、序列やセレモニーなど型にはまったことが嫌い、異端・少数派、などの共通のタイプや特徴があるように感じます。私の仮説ですが、このような特徴は、「その人の脳細胞やエネルギーを、発明が生まれやすい方向に、活性化させ集中させる」作用を持っているのではないかと思います。革新的なアイデアや発明を生み出せるかどうかは、単なる頭の回転の速さとか専門知識の多さではなく、その人の個人としての価値観や生き方がより本質的に関係しているように思います。
青色発光ダイオードを世界で初めて実用化した中村修二さんなどはその生き方が発明に昇華した典型かなと思います。
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2010年02月17日
生物模倣
基本特許の元になる基本発明(パイオニア発明)の手法・法則の一つに生物模倣がありますが、これについて日経産業新聞2010/2/10の記事「2030年への挑戦 次世代産業技術 生物模倣」の記事が面白かったので、その中の一部を少し紹介というか、メモ的に記しておきます。
生物模倣の主な例として、次の5つが挙げられています。
1 トヨタ自動車と東北大の共同研究による「バッタの足裏」の構造を模倣した「低摩擦自動車部品」
東北大の下村正嗣教授がトヨタと2003年からエンジンやトランスミッションの摩擦を抑える研究に取り組み、「平らな六角形が集まった表面構造の膜」を部品の表面に張ったところ、摩擦が大幅に低減したとのことです(もともと、モノ同士の摩擦は平坦より凹凸が有る方が小さくなることは知られていた)。
なお、この「平らな六角形が集まった表面構造」がバッタの足裏の構造とそっくりだったことは、開発した後で分かったそうです。
2 富士フィルムによる「ハチの巣(ハニカム)」の構造を模倣した「医療用癒着防止フィルム」
3 日東電工による「ヤモリの足裏」の構造を模倣した「工業用強力テープ」
4 帝人デュポンフィルムによる「タマムシ、チョウ、クジャクの羽」の構造を模倣した「装飾用カラーフィルム」
5 三菱レイヨンによる「蛾の目」の構造を模倣した「液晶などの反射防止フィルム」
記事の紹介は以上ですが、ルネサンス時代のレオナルド・ダ・ビンチが鳥や魚を模倣した飛行機や船のアイデア図を描いていたのは有名ですね(飛行機について、ダ・ビンチは鳥が羽ばたく動作を模倣した「羽ばたき機械」のアイデアを出しただけでした。その後、19世紀中頃に、英国のジョージ・ケイリーが、鳥が羽を固定したまま風を受けて上昇飛行するのを観察して、「固定翼による飛行機」=「固定翼を上方に押し上げる揚力と、固定翼を前方に推し進める推力と、の基本的な2つの力により飛行する飛行機」を初めて考案しました。その後、20世紀初頭の1903年に米国のライト兄弟がフライヤー1号で世界初の有人動力飛行に成功しました)。
生物が長年の淘汰・進化の歴史の中で改良してきた「環境や生存に適合した構造」を参考にすることは、昔から基本発明の手法・法則の定番だと言えますね。
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