相互リンクしてるThe・知財部員が往く!さんのブログからの引用です。
先週末は、知財コンサルシンポジウム2010に参加するべく、六本木まで行ってきました。(中略)
全体的な印象として、去年以上に事業支援色が強いように感じました。(中略)
つまり、知的財産というよりは、より広義な知的資産(企業文化、人材なども含む概念)に対するコンサルティングであると。(中略)
そして、個人的にも、この方向性(知財っぽくない方へという意味)が、知財コンサルの正しい在り方であるという気がします。(中略)
そうすると、経営戦略という、知財よりはもっと広い視点でコンサルティングにあたることが求められるわけです。
その観点からすれば、真に必要なのは、知財が必要なのか、知財をどう使うのか、ということを経営的視点からアドバイスできる人ということになりますね。
逆に言えば、弁理士等の知財の専門家は必ずしも知財コンサル向きでは無いということです。(中略)
なんだか、「知財コンサル」という言葉自体がナンセンスだという気がしてきますね・・・。
既存のコンサルティングと、あえて分けて考える必要がどこにあるのか?
私は知財コンサルについては知らない方なのですが、このブログを見て少し考えました。
知財コンサルは、弁理士はもう少し経営のことも考えて仕事しなくちゃ、というスローガンとしては大きな意味があると思います(ただ、この場合は「知財コンサル」よりも「コンサル知財」と呼んだ方がいいでしょうね^^;)。
だけど、それ以上に、本当にコンサルタントになると、現実にはもう弁理士でなくなってしまうと思います(「弁理士」の定義にもよりますが、ここでは、弁理士とは明細書作成などの権利化業務を行う者とします。また、弁理士でなくなってしまっても別に全く問題ないと思います)。
コンサルと弁理士は求められる役割や場面(経営のレベル)が明確に違うと思います。なぜなら、特許庁に出す明細書や意見書をしこしこ書いてる人たちをコンサルとは呼べないと思うし、逆に、コンサルが明細書や意見書を書いて特許庁に提出することを顧客が望んでいるとは思えないからです。
そもそも、コンサルと弁理士は相反する性格を持っているのではないでしょうか。
同じ人間が同じ顧客に対してコンサルと権利化業務(弁理士)を同時に行うことは利益相反の問題を生じさせると思います(システム会社がコンサルを行う場合と同じですね)。一般に、利益相反の問題は、一つの事務所の中でコンサル部門と権利化部門を別にするとかコンサル部門を別会社にすれば形式的にクリアされるんでしょうが、少なくとも同じ顧客に関して同じ人間が2つの部門に同時に関与するのはよくないし、コンサルの過程で得た秘密情報と権利化業務で得た秘密情報とを2つの部門の間で互いにやり取りできない体制にする必要があると思います(追記:なお、利益相反は顧客保護のためですので、顧客がコンサル部門と権利化部門とで秘密情報をやり取りしてもいいと了解すれば問題はなくなります。また一方の業務を終了した後に他方の業務というように、同時並行で行わない場合は、問題ないと思います)。
他方、同じ人間が、或る顧客Aに対してはコンサルを行いながら他の顧客B(顧客Aと競合しない場合。競合する場合は一般的な利益相反の問題が生じます)に対して権利化業務(弁理士)を行う場合は、少なくともそれだけでは利益相反の問題はないと思います。
ただ、このように同じ人間が或る顧客Aに対してコンサルを行いながら他の顧客B(顧客Aと競合しない顧客)に対して権利化業務(弁理士)を行うというスタイルを実現するために、1人の人間がコンサルと権利化業務という2つの全く性格の違う仕事の能力を同時に高めていくことはすごく難しいと思います。
「コンサルと弁理士との両方」やるというのも不可能ではないでしょうが、現実的には、一部を除く多くの人にとっては、「コンサルじゃないけど発明・特許相談+αくらいならできる弁理士」(権利化業務で手数料を稼ぐ者)か、「(別に要らないんだけど箔付けで)弁理士の資格も持ってるコンサル」(権利化業務ではなくコンサルで手数料を稼ぐ者)かの、どっちかしかないんじゃないでしょうか。
追記: 上の何箇所か加筆訂正してます。上で書いた「利益相反」の問題が生じる事例を以下に幾つか記しておきます。(2010/3/28)
事例1: 顧客B社を上得意先とし、その顧客B社からの特定の技術分野Cの発明の特許出願の仕事でその売上の8割を上げている弁理士Aが、顧客B社から、顧客B社が事業を行っている全ての技術分野(弁理士Aが受任している特定の技術分野Cを一部に含む)に関して、これからどの技術分野の特許出願をどのくらい増やし又は減らしていくべきかを、世の中の技術動向や出願動向を踏まえながら助言して欲しいというコンサルを依頼されたとき、弁理士Aは適正なコンサルができるでしょうか。
事例2: コンサルを受任している弁理士Aが、顧客B社の経営陣から「まだ経営陣だけの守秘事項だが、1ヶ月後に、技術分野Cの事業から全て撤退することを、社内外に公表する」という情報を示されていた場合において、顧客B社の知財部の担当者から技術分野C(1ヶ月後に撤退を公表する技術分野)に属する発明について「緊急なので3週間以内に特許出願して欲しい」と依頼されたとき(しかも、その発明は、顧客B社の事業の中でのみ利用できるもので、他社への譲渡やライセンスは考えられないものであったとき)、その依頼を受けるべきか。仮に依頼を断るとした場合、どのような理由で断るのか。
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