2010年10月03日

「当接」と「固定」は違うという裁判例

「当接」と「固定」、どちらも明細書ではよく使われている言葉で、違うのは当たり前です。

でも、裁判で、それらの言葉が実際にどのように理解されているのか。

平成21年(行ケ)第10377号知財高裁判決をみると、この辺のことがきっちり議論されてました。

この判決では、「当接」とは、ある部材と他の部材とが「当たり接している」状態を表現しているのみであって、ある部材の他の部材への「固定」(「当接状態を維持する構成」)を含むものと直ちに解することはできない、としています。

こういう判決を見ると、明細書を書く者としては、何となく安心しますね。

以下、平成21年(行ケ)第10377号判決の一部(11頁以下)を引用しておきます。

そこで,前記(1)の条件との関係で引用発明1の操作ボルトの構成をみると,引用例1の記載によれば,操作ボルトは,水道管側(下側)のマウントに水道管側から「当接」しているものとされている(引用例1の11頁17行)。

そして,ここにいう「当接」の意義について検討すると,そもそも引用例1にいう「当接」との文言は,上記部分を除くいずれの用例においても,ある部材と他の部材とが「当たり接している」状態を表現しているのみであって,上記部分だけが原告の主張するような「当接状態の維持」を含むものとは直ちに解されない。かえって,引用例1では,例えば消火栓側(上側)のフランジを筒状本体にセットボルトで「固定」する(引用例1の11頁14行)など,ある部材と他の部材とが原告の主張するような当接状態を維持する構成である場合には,「当接」とは明確に異なる文言が使用されていることに照らすと,操作ボルトとマウントとの上記「当接」が「当接状態の維持」を含むものと解するのは困難である。


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posted by mkuji at 19:41| Comment(1) | TrackBack(0) | 用語の解釈
この記事へのコメント
今でも 当接 などというわけのわからん特許専用難語が使われえているんですね。私はそういった特許難語の使用が大嫌いで、使ってことがありませんし、不便は少しも感じませんでしたが、まあ、そういった難語は(おそらく)外国からの出願明細書に記載されていて用語(主として機械関係の、と書こうとしましたが、そのころの発明は殆ど機械装置でしたろうが)の翻訳に困った、明治以降昭和初期くらいまでの特許翻訳者が苦し紛れに作り出したものでしょうね。<br><br> 明治初期の翻訳学術用語は、漢語の素養豊かなその道の専門家のすばらしい名訳造語が多数あって、現在もそのまま使われており、また読んでも聴いても少しの違和感もなく殆どそのまま理解できるものがほとんどですが(それゆえに今に至るまで使われているのでしょうが)、特許難語は単に特定の技術知識が素人よりは多少は強いが、漢語はもちろん一般教養もあまり持っていない人が期限に追われて苦し紛れに作り出したものでしょうから、ろくでもないものだったのは仕方なかったかもしれませんが、その付けが現在もなお回されていることを考えると、翻訳と言う仕事の重要性にいまさらながら気づかされます。もっとも、近頃のようにもう少し考えれば適切な訳語を作り出せるのに、始めてみる原語(特に英米語)を何でもかんでもカタカナで原音を書きなぐる翻訳者と言う手合いも困ったものですが。<br><br> この文章では特許明細書の悪癖である、歯切れの悪い長々(大して長くもありませんが)しい文章をわざと書きました。
Posted by 井上信三 at 2011年02月10日 13:12
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