2009/11/30付け日経新聞の法務欄の著作権の記事「ウィニーに逆転無罪の高裁判決/著作権強化に冷や水?」を見て、ちょっと気になってたのですが、こちらの企業法務戦士の雑感で既にいろいろ書かれていました。
つまり、このブログに書かれてるのですが、ロクラク事件はカラオケ法理の否定ではなくカラオケ法理を前提としたものではということです。まぁ、僕も、ロクラク事件、詳しく見てませんが、カラオケ法理の否定というよりその限界を画定したというものではと思います。
ところで、この日経記事の中に、次のような文章があります。
カラオケ法理は、サービス提供者の「間接侵害」を強引に「直接侵害」に転換し、その行為を差し止める。なぜこのような考えをとるのか。現行の著作権法では利用者による直接侵害には差止めと損害賠償を求められるが、サービス提供者による間接侵害には賠償請求しかできないからだ。
この部分の「間接侵害」という表現に少し違和感を持ちました(私だけかもしれませんが^^;)。特許法と比較して、「間接侵害」という言葉がかなり広い意味で使われるような気がしたので(特許法では101条で「間接侵害」という言葉は、特定の行為として、かなり狭く定義されています)。
ちょっと調べてみると、著作権法では「間接侵害」という言葉について明確な定義がまだないようです。こちらに出ていました。こちらによると、「間接侵害」とは、明確な定義はないが、直接的侵害行為以外の行為態様による著作権侵害事象(特に直接的な著作権侵害を援助・助長・惹起し又はこれに加担・寄与する行為)というような意味に使用されているようです。また、こちらによると、著作権法には特許法101条のような間接侵害の規定がないので、文部科学省の審議会でそのような規定を創設することに向けての議論がなされていたようです。
著作権法では、現状、「間接侵害」(上記のような広い意味)の一形態である「幇助・教唆」については、損害賠償だけで、差し止めは認められていません(著作権法112条。まぁ、これは特許法でも同じですね)。同法113条の侵害と見做される行為(これも「間接侵害」の一つの形態のような気がしますが)は差止めが認められています。
ウィニー事件では、大阪高裁は、「間接侵害」(上記のような広い意味)の一形態である「幇助」について、「ウィニーが著作権を侵害する手段に使われる可能性をソフト開発者が認識していただけでは、幇助犯にはならない」としました。
他方、ロクラク事件(日本で録画したテレビ番組をネットで海外に転送し、海外で利用者が鑑賞するサービスを提供する運営会社を、NHKと民放9社が著作権侵害で提訴した事件)については、知財高裁は、利用者の行為は個人的にテレビ番組を録画して楽しんでいるのだから私的利用のための複製(著作権法30条1項)として適法だと判断しました。つまり、カラオケ法理が成立しない(サービス提供者は利用者ではない)というだけでなく、直接の利用者の行為が適法なのだから被告(サービス提供者)側の教唆・幇助も成立しない、としたのがロクラク判決なのでしょう。
このロクラク判決(平成20年(ネ)第10055号平成21年1月27日知財高裁判決)の「幇助」を否定した部分(最後の部分)、末尾に引用しておきます。
「小括
以上のとおり,被控訴人らが主張する各事情は,いずれも,控訴人が本件複製を行っているものと認めるべき事情ということはできない。加えて,上記(1)のとおりの親子ロクラクの機能,その機能を利用するために必要な環境ないし条件,本件サービスの内容等に照らせば,子機ロクラクを操作することにより,親機ロクラクをして,その受信に係るテレビ放送(テレビ番組)を録画させ,当該録画に係るデータの送信を受けてこれを視聴するという利用者の行為(直接利用行為)が,著作権法30条1項(同法102条1項において準用する場合を含む。)に規定する私的使用のための複製として適法なものであることはいうまでもないところである。そして,利用者が親子ロクラクを設置・管理し,これを利用して我が国内のテレビ放送を受信・録画し,これを海外に送信してその放送を個人として視聴する行為が適法な私的利用行為であることは異論の余地のないところであり,かかる適法行為を基本的な視点としながら,被控訴人らの前記主張を検討してきた結果,前記認定判断のとおり,本件サービスにおける録画行為の実施主体は,利用者自身が親機ロクラクを自己管理する場合と何ら異ならず,控訴人が提供する本件サービスは,利用者の自由な意思に基づいて行われる適法な複製行為の実施を容易ならしめるための環境,条件等を提供しているにすぎないものというべきである。」
にほんブログ村 法務・知財←ブログランキングに参加してます。ポチッと^^