「著作権判例百選」で著作権侵害、出版差し止め 2015年10月29日 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/national/20151029-OYT1T50033.html
[引用開始] 法律専門誌「著作権判例百選」の編者の一人が、自分を編者から無断で外して改訂版を出版するのは著作権の侵害だとして、出版元の有斐閣に差し止めを求めた仮処分申請について、東京地裁(嶋末和秀裁判長)が著作権侵害を認め、出版差し止めを命じる決定を出したことがわかった。
決定は26日付。
これを受け、同社は11月上旬に予定していた改訂版の出版を当面見送ることを決めた。著作権に関する重要判例を紹介する専門誌が、著作権侵害を理由に出版できなくなる異例の事態となった。
差し止めを求めたのは、大渕哲也・東大教授。同誌の第4版では編者の一人になっていたが、第5版では無断で外された。決定は、第5版に収録予定の判例や執筆者の約8割が第4版と同じであることなどを踏まえ、大渕教授の合意なく出版することは「著作権を侵害する行為」と判断した。[引用終わり]
[引用開始] 法律専門誌「著作権判例百選」の編者の一人が、自分を編者から無断で外して改訂版を出版するのは著作権の侵害だとして、出版元の有斐閣に差し止めを求めた仮処分申請について、東京地裁(嶋末和秀裁判長)が著作権侵害を認め、出版差し止めを命じる決定を出したことがわかった。
決定は26日付。
これを受け、同社は11月上旬に予定していた改訂版の出版を当面見送ることを決めた。著作権に関する重要判例を紹介する専門誌が、著作権侵害を理由に出版できなくなる異例の事態となった。
差し止めを求めたのは、大渕哲也・東大教授。同誌の第4版では編者の一人になっていたが、第5版では無断で外された。決定は、第5版に収録予定の判例や執筆者の約8割が第4版と同じであることなどを踏まえ、大渕教授の合意なく出版することは「著作権を侵害する行為」と判断した。[引用終わり]
大渕教授は、「著作権判例百選」の第4版の編者を務めていたことから、本年9月に出版が予定されていた第5版と第4版とは判例や執筆者が9割近く一致しており、第5版は(独立した著作物ではなく)「第4版を原著作物とする二次的著作物」であるから、合意なく自分を編者から外して第5版を出版すること(自分の氏名を編者として表示しないで出版すること)は編集著作権(及び著作者人格権)の侵害となると主張しており、それが、今回、東京地裁により、仮処分の段階ではありますが、認められました。
「著作権判例百選」といえば知財を扱う実務家(弁護士、弁理士、企業法務部)や学生なら誰でも知っている雑誌ですし、有斐閣といえば法律関係で最も代表的な出版社の一つで、大学教授の立場から見れば言わば「お客筋」(座談会の出席依頼とか原稿依頼などの商売の話をもって来てくれる会社)です。そして、有斐閣の雑誌編集部は、大渕教授が勤める東大の正門の目の前にあります。
また、大学教授としては、大組織には刃向かわない温厚な人柄を演じておいた方が、政府の審議会委員に選ばれやすいなど、何かとメリットが大きいのは明らかです。
そのような様々なマイナス面があるにも拘わらず、しかも「著作権判例百選」の第5版の出版を待ち望んでいた人も多いでしょうから、そのような人たちにいわば迷惑(?)をかけてまで、日本の知財を代表する学者が「お客筋」の出版社を相手に仮処分申請をしたというのは、勝てると思ったからでもあるでしょうが、私は、「肚の座った人だな」と感心しました。
ある弁護士さんが、本件は背景に(編者から外されたことで)感情的な行き違いがあったのではないか・・・話し合いで円満に解決してほしいという趣旨のことを述べられておられましたが、私は、本件をそのようなゴシップ的な観点で矮小化してほしくないと思いました。
本件が、「たとえ客筋であろうと理不尽なことがあれば原理原則を主張しそれを認めてもらうことが当たり前になる社会」に到達するための、道筋を付けてくれるような裁判になってほしいと思います。
本件が、「たとえ客筋であろうと理不尽なことがあれば原理原則を主張しそれを認めてもらうことが当たり前になる社会」に到達するための、道筋を付けてくれるような裁判になってほしいと思います。