2011年10月30日

新規性喪失例外の適用を受けるために来年4月まで出願を遅らせるという選択について

改正特許法30条は、特許を受ける権利を有する者の行為に起因して新規性を喪失した発明でも、その新規性喪失の日から6月内に出願すれば、新規性及び進歩性の判断において新規性を喪失しないものとみなす、としています。

改正特許法30条の施行日はまだ確定ではないものの来年(2012年)4月1日となるようであり、そうだとすると、この改正法30条は来年4月以降の出願に適用されます。

その結果、もし今、企業が自ら発明品を発表・展示・販売した場合、来年4月1日は今から6月以内なので、来年4月1日に出願すれば、新規性喪失の例外を受けられます。

これに対して、焦って来年3月以前に出願してしまうと、新規性喪失の例外を受けられず、特許取得は理論上、不可能になります。

まぁ確かに結論はこうなるのですが、新規性喪失の例外の適用を受けるために、わざと来年4月まで数ヶ月も出願を遅らせるというのはおかしな感じもします。

その数ヶ月の間には、第三者からもいろんな動きがあるはずです。

新規性喪失の例外が適用されるのは、当該行為に起因して新規性喪失となった場合(自社の公表をマスコミが報道したり、その報道を見た個人がブログに掲載するなどの「二次的な公開」を含む)だけで、出願日が遡及する訳ではない、とされています。

したがって、自社の公表から出願までの間に、例えば第三者が独自の同一発明や改良発明を公表するか又は出願すれば、別の新規性喪失理由により又は29条の2(拡大先願)の適用により、権利取得は不可能になります。

この場合、仮に、その第三者が、本当は、自社の発表や展示などを見てそれを公表したか又は出願したのだとしても(このような場合は、同一発明の公表は二次的な公開なので新規性喪失の例外の適用を受けられるし、出願は冒認出願なので29条の2の適用はない)、第三者が「いや自分で独自に発明したんだ」と主張したら、それに対する反証は極めて難しいと思います(その第三者の出願も同一発明については新規性がないとして特許取得できませんが、それは別の話です)。

結局、新規性喪失の例外の規定には余り期待しないで、公表する前に無理をしてでも出願するというのがベストと思います。

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posted by mkuji at 23:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 特許法改正