2011年06月01日

特許法改正案が今国会で可決、成立

日経新聞にも出ていますが、昨日(2011/5/31)、特許法改正案が今国会で可決、成立しました。

http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C93819481E1E3E2E1938DE1E3E2E7E0E2E3E39797E0E2E2E2;at=DGXZZO0195164008122009000000

これについての特許庁の解説、特許法等の一部を改正する法律案についてもあります。

今回の特許法改正の主なポイントは次のとおりです。

1.発明を横取りされて出願(冒認出願)され特許された場合は、真の発明者(又はそれから特許を受ける権利を譲り受けた者)は特許を自己に移転することを訴訟で請求できる(74条1項。追記:例えば3人が発明者なのに2人だけが出願して特許された場合、残りの1人の発明者又はそれから特許を受ける権利を譲り受けた者は他の2人に対して共有持分の移転を請求できる)。

2.特許ライセンスを受けたライセンシーは、ライセンサーが特許を譲渡した場合でも、特許の譲受人に対して(特許庁への登録がなくても)自己の通常実施権を主張できる(当然対抗制度。99条1項)。

3.発明者の行為(公表)に起因して公知になった発明(公表の態様は問わない。但し内外国の特許庁の公報に掲載されたことにより公知になった発明は除く)については、その公知になった日から6ヶ月内に出願すれば新規性・進歩性を失わない(30条2項)。

4.赤字の中小企業等に対して減免する特許料を、第1〜3年分の特許料から第1〜10年分の特許料へ拡大する(109条1項)。

5.訂正審判請求または訂正請求の目的要件として、改正前の特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明瞭でない記載の釈明の3つに加えて、「請求項の記載を従属形式から独立形式に変更すること」を追加した(126条1項4号、134条の2第1項4号)。

6.訂正審判請求または訂正請求を、請求項ごとに又は「一群の請求項」(引用関係など政令で定める関係を有する一群の請求項)ごとに行うこととした(126条3項、134条の2第2項及び3項。訂正請求については改正前から認められていた。訂正審判請求については、改正前は「全ての請求項」を一体として請求しなければならなかった)。これとの関係もあって無効審判や訂正審判の審決の確定範囲も請求項ごと又は一群の請求項ごととした(167条の2)。

7.無効審判において「請求に理由がある」(つまり無効)とする審決を出すときは、その前に「審決の予告」をして特許権者に訂正請求の機会を与えることとし(164条の2)、その代わりに、無効審判が特許庁に係属した時からその審決が確定するまでの間は、訂正審判の請求を禁止した(126条2項。改正前は、改正前の126条2項により無効審判の審決に対する取消訴訟の提起から90日内は訂正審判の請求ができたが、そのために、出訴後に特許権が訂正されると事件が無駄に裁判から審判に差し戻されてしまうという弊害があったので、無効審判の段階で訂正請求の機会を確保する代わりに、無効審判の特許庁への係属後は、それが確定するまでの間、訂正審判請求を一律に禁止した)。また、この関係で、改正前の181条2項(無効審判の審決の取消訴訟が提起された後の90日内に訂正審判請求が行われたとき裁判所が決定により審決を取消すことができるとの規定)を削除した。

8.侵害訴訟の原告勝訴判決が確定した後に特許無効の審決が確定した場合でも、又は原告敗訴判決が確定した後に特許訂正審決が確定した場合でも、その審決の確定を再審事由として主張できないとした(104条の4)。

9.無効審判の確定審決について、同一の事実及び証拠に基づいて争えない者の範囲を、改正前の「何人も」から「当事者及び参加人」に狭めた(167条)。つまり、無効審判の確定審決の第三者効を廃止し、無効審判の審決が確定しても当事者等以外の第三者は同一の事実及び同一の証拠に基づいて無効審判を請求することができるとした。

10.料金関係では、意匠法の改正により、意匠登録の第11〜20年分の維持年金が第4〜10年分の年金と同額の年16,900円に減額されました(意匠法42条)。また特許出願の審査請求料については、法改正とは別ですが、本年中の減額が特許庁内で検討されているようです。

11.商標法の改正では、商標権が消滅した日から一年を経過していない他人の商標又はこれに類似する商標の登録を認めないとする規定(改正前の4条1項13号)が削除されました。(10,11は追記しました。)

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posted by mkuji at 23:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 特許法改正