2011年03月27日

原発の今後

まだまだ福島原発の状況は予断を許さないというか悪くなっている感じです。

最近知りましたがチェルノブイリ原発事故を契機にドイツはいったんは2021年までの原発全廃を決断したんですね(その後、稼動期間の延長を決断)。

2chで話題になっていた「批難覚悟で・・・・」、13歳の中学生アイドル(藤波心さん)の主張ということですが、中身は筋が通ってると思います。

今回のような原発事故は人間にとって制御不能なものである点で交通事故とは違うと思います(追記:事故の最中に制御不能になっている点では原発事故も交通事故も同じですね。ただ、電車と徒歩だけで原則として車は使わないとか安全運転に心掛けるとかで個人レベルで事故が起こるリスクをある程度コントロールできるかどうか、事故が起こった後の被害をコントロールできるかどうかなどで、やはり交通事故と同列には論じられないと思います)。

とすれば、今すぐの廃止は無理としても、他のエネルギーへの代替や電力をなるべく使わないライフスタイルへの転換をも含めて、原発の今後について真剣に議論して行くべきでしょう。

池田信夫さんがブログで、今回の事故を契機に原発を停止すべきという内田樹さんの主張に対して、「これは事実認識として誤りである。今回の原発事故で、人命は1人も失われていない(今後も死者はゼロに近いだろう)。」と反論しています。

しかし、事実認識として、今回の原発事故で、将来的に「複数の人命が失われる」可能性はあると思います。

なぜなら、そもそも「人命を失わせる」というのは「寿命を奪う」という意味であり、原発事故が無かったら80歳まで生きられた人が原発事故のために70歳までしか生きられなくなったとしたら「10年分の寿命が奪われた」=「(言葉の広い意味で)人命が失われた」ということになるからです。100歳まで生きる予定だった99歳の人を死なせてしまったら「1年分の寿命を奪った」ということですが、もしそれが死へ向けた行為によるものであった場合(今回の原発事故は死へ向けた行為ではないので違います)、故意行為なら殺人罪、過失行為なら過失致死罪になるのです。もし50歳の人に「20年後に爆発する時限爆弾」を埋め込んで、それが20年後に爆発して、本当は80歳まで生きれらたはずの人が70歳で亡くなったら、その20年後の爆発の時点で殺人罪が成立するでしょう。

今回の原発事故で、将来的に、複数の人が寿命を縮められてしまう可能性はあると思います。

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2011年03月24日

発明の要旨認定に出願経過を参酌した事例 平成22年(行ケ)10209号「コンピュータシステムの起動方法・・・」

平成22年(行ケ)10209号「コンピュータシステムの起動方法,コンピュータシステムおよびハードディスクドライブ」平成23年03月17日知財高裁滝澤孝臣裁判長

「2 取消事由2(相違点を看過した誤り)について

(1)原告は,本願発明のディスクに保存される「OS」にはOSの起動プログラムが含まれることが自明である一方,引用発明のフラッシュメモリーに保存されるプログラム起動時に使用されるファイルがハードディスクには保存されず,この点で本願発明と引用発明とが相違する旨を主張する。

(2) そこで検討すると,本願発明の特許請求の範囲の記載には,ディスクに保存される対象としては「OS」と記載されるにとどまり,OSのうちの起動プログラムを積極的に排除する記載がないばかりか,・・・本件明細書の発明の詳細な説明欄は,いずれも,HDDのディスクに保存される「OS」にその起動プログラムが含まれる実施形態を開示しているということができる。

(3) しかしながら,原告は,・・・

(4) また,原告は,・・・

(5) 以上の手続経過に鑑みると,原告は,拒絶査定を避けるべく,本願発明の特定に当たりディスクに保存される対象からOSの起動プログラムを排除した(前記(3))ほか,分割出願の要件を満たして出願日を遡及させるべく,駆動モーターが定常速度になった後に制御部がディスクから読み出す対象からOSの起動プログラムを除外した(前記(4))ものと認められる。

 そして,他に本願発明の特許請求の範囲の記載中にはディスクの保存対象としてOSの起動プログラムが含まれると解するに足りる記載が見当たらないことも併せ考えると,本願発明の解釈に当たり,ディスクにOSの起動プログラムが保存されていないものと認定し,引用発明との関係で相違点を認定しなかった本件審決に誤りがあるとまではいえない。」

この判決のロジックを私なりに要約すると、次のとおりです。

A.本願発明の特許請求の範囲の記載からは,ディスクに保存される「OS」には起動プログラムも含まれると解するのが自然。

B.本願明細書の記載を参酌しても、そう解するのが自然。

C.しかし、出願審査の過程で、原告(出願人)は,拒絶査定を避けるべく,ディスクに保存される「OS」から起動プログラムを(補正で)除外した。

D.このような出願経過にかんがみると、ディスクに保存される「OS」には起動プログラムは含まれないと解しても問題はない(よって、審決が起動プログラムの有無を相違点として認定しなかったとしても問題はない)。

この判決についての私のコメントは次の3点です。

1.出願経過を、侵害訴訟ではなく拒絶審決に対する取消訴訟の発明の要旨認定の場面で使用した点で、すごく新しいと思います。

今までに出願経過を発明の要旨認定で使用する裁判例が無かったのかどうか知りませんが、従来は出願経過はほとんど侵害訴訟のクレーム解釈(技術的範囲)で問題にされているので、珍しいことは間違いないでしょう。

上記のロジックの中、Aはリパーゼ最判による原則的な発明要旨認定手法で、Bもリパーゼ最判が許容している発明要旨認定手法です。

これに対して、この判決は、上記のCとDのロジックを持ち出して、上記のAとBから(つまりリパーゼ最判から)導かれる結論(ディスクに保存される「OS」には起動プログラムも含まれる)と全く反対の結論(ディスクに保存される「OS」には起動プログラムも含まれない)を導いています。

2.出願経過を使って特許請求の範囲の用語を解釈しているのですが、これが出願人側に有利な解釈なのか不利な解釈なのか、はっきりしません。

つまり、侵害訴訟(技術的範囲)の場面では、文言侵害の成否が問題なので、出願経過を使用する場合は原告側に不利な限定解釈だけが許されるのが原則だと思います。

本件では、上記のように特許請求の範囲及び明細書の記載からは「ディスクに保存されるOS」(以下「OS」と略します)には起動プログラムが含まれると解すべき(リパーゼ最判)ところ出願経過を参酌して「OS」には起動プログラムは含まれないと解した訳ですが、もしこれが侵害訴訟の文言侵害の成否の場面なら、これは文言侵害を否定するための限定解釈となります。被告製品が起動プログラムに関するものである場合に、特許請求の範囲の「OS」が起動プログラムを含むなら文言侵害成立、含まない(限定解釈)なら文言侵害不成立となるからです。

これに対して、本件のように発明の要旨認定の場面では、(1)「OS」には起動プログラムが含まれると解する(文言どおりの解釈?)ときは、引用発明が起動プログラムを含むなら相違点なく進歩性なし、引用発明が起動プログラムを含まないなら相違点があり進歩性が認められる可能性あり(これが本件の原告の主張です)、となります。また(2)「OS」には起動プログラムは含まれないと解する(限定解釈?)ときは、引用発明が起動プログラムを含むなら相違点ありで進歩性が認められる可能性あり、引用発明が起動プログラムを含まないなら相違点がなく進歩性なし、となります。

発明の要旨認定では、どのように解釈したら出願人に有利または不利になるかですが、一般的には、進歩性でもサポート要件でも限定解釈の方が特許性が認められやすいので有利と思います。その点で、本件では逆に、原告(出願人)が限定解釈ではなく文言どおりの広い意味の解釈の主張とそれを前提としての相違点の主張をしているので、珍しい例です(※この部分は追加訂正しました)。侵害訴訟では限定解釈されると文言侵害の成否に不利なのははっきりしています。

3.いずれにせよ、本判決でも、出願経過は出願人に不利な解釈を導くために使われており、その点では妥当ということでしょう。

この点、昨年末に一審判決が出て話題になった「サトウの切り餅」事件では原告側が出願経過を自分に有利な解釈を導くために使おうとしているように読めましたがそれは無理だろうと思いました。

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posted by mkuji at 23:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 要旨認定

2011年03月20日

自民党が原発問題担当相を拒否

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110318-00001107-yom-pol

菅首相(民主党代表)が東日本巨大地震と東京電力福島第一原子力発電所での事故を受け、自民党の谷垣総裁に原発問題担当相としての入閣を要請していたことが18日、明らかになった。谷垣氏側は拒否した。

自民党の谷垣さん原発問題担当相を拒否というニュースですが。

今回の原発事故の発生責任は原発政策(施設の耐震基準なども)を策定した当時の自民党政権にある

→谷垣さんが原発担当の大臣になれば社民党や共産党から当時の自民党政権の原発政策の正当性や政治責任について国会で質問され窮地に立たされる

→そんな大臣、受けられる訳ない

ということは自明のはずなのですが、菅さんはなぜこんな提案をしたのでしょうか。

最初から受けないと見越した上で言ってみただけという感じがしますね。

posted by mkuji at 21:41| Comment(4) | TrackBack(0) | 一言

福島原発事故の今後

福島原発事故の今後について大前研一さんの解説(昨日収録)を見ましたが、いろいろ知らなかった情報が得られました。

印象に残った点をメモ的に記しておきます。

1.米国は、隠蔽体質の東電からの情報に振り回されている日本政府の言うことは信用できないと見ている。だから、独自の分析で米国民に対して原発80km圏内からの退避勧告を出した。なお大前氏は、今の日本政府の20km圏内は避難、20〜30km圏内は屋内退避という指示は、原発の状況が現状のままなら妥当と考えている。

2.原発事故という非常時の司令塔が日本政府にない。原子力安全・保安院は、特許庁に出向で行ってた人など高度な専門知識の無い人だけで構成されている、天下り先のお飾り組織で、今の非常時には役に立たない。

3.電源が復旧して燃料棒の冷却をするとしても、少なくとも3〜5年間、冷却を続ける必要があるので、その間は(建屋などが壊れているため)放射線が漏れ出るままとなる可能性がある(テントなどで上から覆って遮蔽すれば少しはましになる)。5年間の冷却後は、冷却プールから燃料を取り出して陸奥に持って行き、その後、原発内の核分裂物質を除去した後、コンクリートで永久封印する。その周辺は半永久的な立ち入り禁止区域となる(チェルノブイリでは500の村が今も無人のまま)。

4.米国のスリーマイル島原発事故の経験から見て、今後30年は日本での原発の新規建設は無理。よって日本の原子力産業は衰退・滅亡する。

5.今は東日本と西日本とで周波数が違うので電力の融通ができないが1000億円あれば融通できる施設が作れるのでやるべき。

印象に残ったのは以上ですが、要は、原発事故は原爆と違って不完全燃焼の状態なので、広島・長崎と同じには行かず、今後数十年のスパンで被害が残るということです。



posted by mkuji at 17:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 一言

2011年03月19日

震災で変わったこと

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110319ddm012040016000c.html

日本政府が、米空軍無人偵察機「グローバルホーク」が撮影した福島第1原発上空の映像の提供を受けながら、公開に慎重姿勢を見せていることが関係者の証言で分かった。

公開すると相当まずい映像が映っているのでしょうか。

福島原発では、昨日あたりから、ヘリや消防車での放水、冷却システムの電源工事など希望がもてる報道が続き、少しほっとした雰囲気もあったのですが、まだまだ予断を許さない状況なのでしょう。

ところで、ネットなどで「被災地でない地域の人たちは普段どおり贅沢や消費をしろ、その方が震災からの経済復興も早まる」という意見があります。経済学的には正論なのでしょうが、経済発展のためにはそこまでしなくてはならないのか、空しく響きます。

今回の震災や原発事故で変わったことはいろいろあるでしょうが、日本人全体の心性や価値観が大きく変わったと思います。

贅沢や浪費は資本主義のエンジンなので、日本人の多くがそれらに魅力を感じなくなれば日本の資本主義の先行きは暗いということですが、それもやむを得ないように思います。

これからは、株やFXで儲けたことが賞賛されることは無くなり、儲からなくても物づくりや福祉などの地に足を付けた仕事をしたいという人が増えるのではないでしょうか。消防署や自衛隊への就職を希望する人も増えると思います。

posted by mkuji at 20:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 一言

2011年03月16日

震災について

地震により被災された皆様には心よりお見舞い申し上げます。

地震については今もいろいろ報道されてますが福島第1原発は次から次へと深刻なトラブルが連続しています。

開閉弁の操作は遠隔操作系統が壊れているのか手動でやるしかないようです。

1号機の格納容器ではベテランの当直長が特殊防護服を着て短時間で弁を開けたが大量の放射線を浴びて入院されたそうです。

まさに命懸けの作業で本当に頭が下がります。このような危険区域での作業者の方々はどのように人選されているのでしょうか。志願する人も少なくないとは思いますが。

4号機では、今日からヘリコプターと消防車からの水とホウ酸を散布して屋根と外壁の壊れた部分からそれらを入れて冷却することを検討中ということですが、ヘリコプターと消防車に搭乗する作業員の方々は爆発による危険に晒されることになります。

祈りながら見守りつつ、とりあえず私には今の仕事と生活を続けるしかないと思います。

posted by mkuji at 01:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 一言