2010年12月07日

香りの模倣品対策は?

台頭する「コピー香水」と闘う香水・香料業界 2010/11/29

高級ブランド香水とそっくりの香りを売り物に、安価な「コピー香水」を販売するウェブサイトが増えている。

これらのサイトは、人気香水のコピー製品であることを公言し、売り上げを伸ばしている。(中略) その1つ、英国の香水販売サイト、パフューム・パーラー(Perfume Parlour)では、「トップノートからミドルノート、ベースノートまで高級ブランド香水とまったく同じ」香油を、わずか10分の1程度の価格で販売する。ガス液体クロマトグラフィー(GLC)によって高級ブランド香水の化学組成を分析し、独自製品を製造しているのだという。高級バッグなどの偽造品と異なり、香水のコピー製品を「かぎ分ける」のは簡単ではない。香水をつけた人が街中でそのボトルを見せびらかすことはないからだ。さらに、コピー製品がボトルの形状やロゴといった商標を侵害していない限り、香りが似ているというだけでは、差し止め訴訟を起こすことも難しい。(後略)

最近は香水の材料が天然香料ではなく合成香料主体になっているために、組成分析・コピーが容易になったことが背景事情としてあるようです。

香水を保護するためには、現行法下では、ノウハウとして秘密保持することと、その逆に、組成や製造方法を特許で取得することしかないと思います。ただ、もし特許にすると、組成データなども公開されるのでコピー品がますます出回る可能性があります。

それで、上の記事にあるように、著作権法を改正して、著作権法の保護対象を「文芸、学術、美術又は音楽の著作物」から「香りの著作物」にまで拡大しようという動きもあるようです。いずれにせよ香水の香りについては現行法下では決定的な模倣品対策はないというのが結論でしょう。

上記は「香りを」保護するという話ですが、「香りで」保護するというのはこれと違う話です。

自社の商品やサービスを「香りで」保護したい(「香りで」競争優位に立ちたい)というときは、現行法下では、例えば、「特定の香りを有する(発生する)携帯電話」という特許を取って、特定の香りを訴求ポイントにして消費者に自社の携帯電話を選んでもらおうとするのは良いアイデアだと思いますが、「香り徐放シートや香り発生装置を備えた携帯電話」のアイデアは、かなり昔から既に多数出願されています。

また、商標法を改正して、「匂いの商標登録」を認めれば、自社の商品やサービスを「香りで」保護すること、つまり「特定の香り」を自社の商品やサービスの識別標識として独占することが可能になります。匂いの商標登録は米国など複数の国で既に認められており、日本特許庁でも法改正を検討したこともあるようです。

それから、同様に、不正競争防止法を改正して、自社の商品やサービスについての周知・著名な香りを他社が同じ商品・サービスについて使用することを禁止できるという規定を創設すれば、商標登録などがなくても自社の商品・サービスを「香りで」保護することが可能になります(現行の不正競争防止法2条1項1,2号は、あくまで自社の商品・サービスについての「周知・著名な表示」を保護するものなので、「周知・著名な香り」は保護されません)。

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