2010年4月19日、1冊100円で書籍を PDF 化するサービス「BOOKSCAN(ブックスキャン)」の提供を開始した。
BOOKSCAN は、書籍を一冊100円で裁断し、スキャナーで読み取った後、PDF 化するサービス。「本が好きだけど、本棚はいっぱいだし、本をたくさん買いたいのに 場所的に置く場所がなくて困ってる」というユーザーをターゲットとしている。
利用者は会員登録後、書籍を送付し、1ページづつスキャン、全ページ PDF 化したデータをメールもしくは CD-R/DVD-R 形式で納品する。裁断後に読み取り完了した書籍は、廃棄処分される。
少し前の記事ですが、この「BOOKSCAN」について、小飼弾さんのように合法だという意見もありますが、著作権法的にクロだという意見がネットでは多いので、自分なりに少し検討してみます。
まず、著作権法30条1項は、著作物の私的使用(個人的家庭的使用)を目的とする複製は適法としていますが、ただし「自動複製機器」(同30条1項1号)を用いて複製する場合はその例外として違法だとしており、「業者のスキャナ」はこの「自動複製機器」に該当するので違法だとする意見があります。
しかし、この業者のスキャナが「自動複製機器」であるから違法だとすると、コンビニに設置してあるコピー機も同じく違法(私的使用目的でコピー機を用いて複製した者は同119条1号括弧書きで不可罰だが違法であり、コピー機の設置者は同119条2号で可罰的違法)ということになってしまいそうです。ただ、中山信弘「著作権法」をみると、これにはまたまた例外があって、著作権法の附則5条の2で「当分の間、30条1項1号の『自動複製機器』には、『文書又は図画の複製に供するもの』は含まないものとする」と規定されていますので(こう何回も例外があるとおちょくられてる感じになりますが^^;)、結局、使用者も設置者も、民事・刑事とも責任なし、となるようです。
ではこういうサービスは適法かとなると、そうではありません。栗原潔さんが当初から指摘されてますが、同30条1項は(私的使用目的の場合は)「その使用する者が(=著作物を使用する者が)複製することができる。」としているだけなので、「使用する者」ではなく「代行業者」が複製した場合は複製権侵害になる、ということです。つまり、この「使用する者」には、本人以外の本人と同一視できる補助者(子どもの家族とか身体障害者の補助者など)は含まれるが代行業者は含まれないというのが通説的見解のようです。よって、(書籍を裁断したものを)「業者がスキャナーで読み取る」ことは、同30条1項に該当しないので、複製権の侵害になる、ということです。
なお、以上は一般論ですが、この「BOOKSCAN」そのものは完全に合法と思います(きちんと運用すれば)。
というのは、この「BOOKSCAN」のプレスリリースを見ると、次のように書かれており、事前に弁護士と綿密に打ち合わせてるのではないかと予想されます。
1.スキャン可能な書籍かどうかご確認後、お申し込み頂きます。このように、このサービスでは、「スキャン可能な書籍」であること、つまり「著作権がクリアされている書籍」(例えば著作権切れ、著作権フリー、著作権者の許諾済みなど)であることがサービス申し込みの条件となっています(「スキャン可能な書籍」とは、スキャンが物理的に可能なだけでなく法的にも可能であるような書籍、と解釈すべきでしょう)。その確認ができない場合は申し込みを受けないというつもりなのだと思います。また、その確認を厳密にした上で受けた場合は、後で実は違法だった(例えば顧客が著作権者の許諾文書を偽造してウソをついていたなど)となっても、故意はもちろん過失による賠償責任も免れる可能性は十分あります。
2.冊数・オプションに応じた金額を、クレジットカード決済にてご入金頂きます。
3.書籍をダンボールにつめ、ブックスキャン宛に発送して頂きます。
4.ブックスキャンに到着後、スキャン完了日時をご連絡致します。その後書籍を裁断しスキャンした後PDF化致します。
5.PDF化されたデータは、メールにダウンロード頂けるURLを記載するか、CD-R(オプション)で納品致します。
6.お客様へPDFデータが到着後、さまざまなPDFリーダー等で閲覧頂けます。
なお、このような面倒くさいサービスが100円というのは経営的に割に合うのかなとも思いましたが、会社の話題作りとか他のメリットも考えてるんでしょうね。
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