毎日jp 2010/3/17 八百長疑惑裁判:賠償を3割以下に減額 東京高裁判決
大相撲の八百長疑惑を報じた週刊現代の記事で名誉を傷付けられたとして、日本相撲協会と北の湖前理事長が発行元の講談社や筆者らに1億1000万円の賠償などを求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は17日、1審に続いて講談社側の賠償責任を認め、賠償命令額を1540万円から440万円に大幅減額した。藤村啓裁判長は「名誉棄損の慰謝料は著名人であるかどうかで左右されるべきでない。1審の認定額は高すぎる」と述べた。(中略)
高裁は「記事が真実であることの証明がない」として名誉棄損を認定。前理事長への賠償額について「地位や収入に現実の損害が生じているとは認められず、精神的苦痛に対する慰謝料のみを認めるべきだ」として330万円と算定した。協会についても「興行実績悪化などの実害はなく、記事に対する対応や力士への調査などで不利益を受けたに過ぎない」と判断し、賠償額は110万円とした。
最近、相撲協会などの著名人の週刊誌に対する名誉毀損損害賠償訴訟で、高額の慰謝料が問題になっていました。
全国誌の出版社でも財務的には決して裕福とは言えないので、高額の慰謝料が認められると、出版社の経営を揺るがすことになり、言論の自由を萎縮させる結果になるからです。また、自社に不利な記事を書いた個人ジャーナリストを大企業が高額の損害賠償で訴えるなどの「恫喝訴訟」(自社に不利なことを書かないように恫喝する手段としての訴訟)も表現の自由を萎縮させるものとして問題となっていました。
本来、慰謝料は精神的苦痛に対する賠償ですが、実際には、裁判の中で証明できなかった財産的損害をも慰謝料の中に潜り込ませるという調整弁の機能をも持たされていたので、事実上、経済的損害が大きい著名人は一般人に比べて慰謝料が高額になる傾向があったのです。
そのような業界慣行(馴れ合い)を、今回の東京高裁の裁判官が覆した、と言えると思います。
言われてみれば、著名人かどうかで精神的苦痛に対する慰謝料の額が大きく違うというのは、人間の価値を平等とする憲法の原則に反している訳で、至極まっとうな考え方と思います。
ただ、「著名人か一般人か」が、慰謝料を算定する際の一つの考慮要素になることは認めてよいと思います。個々的に見て、著名人の方が高くなることも、一般人の方が高くなることもあってよいと思います。
例えば、著名人の場合は一つの雑誌の記事だけで多くの国民に注目されてしまうという点で慰謝料額を高くする方向もあり得るし、逆に、もともと著名人なのだからそのような被害は覚悟の上だろうし、マスコミへの露出が増えて人気が出ることもあることからは低くする方向にいってもよいと思います。他方、一般人の場合は、一つの雑誌記事だけでは全国的に注目されなくて一部の人たちが知っただけとしても、それでイジメられたり地域社会で生活しずらくなったなどの事情があれば高額の方向に行くべきと思います。
にほんブログ村 法務・知財←ブログランキングに参加してます。ポチッと^^