2009年12月30日

長崎県のベンチャーが痴漢冤罪を防止する手袋を開発(特許出願も)



47news 2009/12/26 記事タイトル:痴漢の冤罪を手袋で阻止 男女とも安心、特許出願中



「これがあれば男性も安心して電車やバスに乗れます」―。長崎県佐世保市のベンチャー企業「マインドバンク」が、痴漢と間違われないよう手袋に曲がった合成樹脂板を入れ、手を軽く握った状態のまま開けなくする「男のグー手袋」を開発した。インターネットで卸販売を始め、特許も出願中だ。



この痴漢冤罪を防止する手袋、要するに、「普通の手袋の中に、曲がった指の形をした硬い合成樹脂板を入れて、指を動かせないようにする」(これで痴漢が不可能?)というもので、特許出願中とのことです。


1個1,575円で販売とのことですが、2chでは「手の甲でお尻をさわられましたで終りだろ」とか「かえって怪しすぎる」など、かなり厳しい評価が多いようですね。


でも、こういうモノを考え付く人は稀な訳で、その意味で発明の才能(発想力)はかなりある人だと思います。


もし出願審査請求されて、特許庁で審査された場合、手袋の中に曲がった指の形をした硬い合成樹脂板を入れて指が動かないようにするというのは、外形的には、手袋付きの義手などで似たものがあるかもしれません(特許庁の審査で、義手などが、この発明は進歩性がないという先行技術として引用されるかもしれません)。しかし、義手と「痴漢ができなくするための合成樹脂板」とは目的や効果が大きく異なるので、この発明について進歩性が認められる可能性はかなりあるのではと思います。


こう考えると、クレーム(特許請求の範囲)を「痴漢をできなくする(痴漢冤罪を防止する)方法の発明」として構成した方が進歩性は認められやすいのかもしれませんね。


まぁ、特許が取れても、売れるかどうかは全く別なんですけどね。


今年はこれが最後のエントリになります。


皆様、よいお年を。


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2009年12月28日

「下請けが発注者の手足・一機関として製造する場合は発注者自身の実施だと評価すべき」という論理



ライセンス契約の実施権者(第三者への再実施許諾権は与えられていない実施権者)または先使用権者が、許諾対象製品を下請けに製造させた場合、その下請けによる製造が「下請け自身の実施」だとすればその下請けの行為は特許侵害になるが、下請け業者は発注者の手足に過ぎず発注者の一機関としての行為だとすると「実施」しているのは発注者(=実施権者または先使用権者)なので下請けの行為は特許侵害とはならないとされている(昭和44年10月17日最高裁判決。間接正犯と似た論理だろう)。


そして、「下請け」には、下請け業者が独自に実施していると評価すべき場合と、下請け業者は発注者の手足で一機関として行っていると評価すべき場合との2つがあるとされている。


下請けの製造が発注者の手足すなわち一機関としての行為かどうかは、原料の購入、製品の販売、品質などについての発注者の指揮監督の強さ、全製品が発注者に引取られるか、などが基準となるとされている。


ところで、上記の「下請けが発注者の手足・一機関として製造する場合は発注者自身の実施だと評価すべき」という論理は、実際の製造を行っている者が実施権者や先使用権者ではない場合にその行為者の特許侵害を否定する方向に働くものだが、この論理は両刃の剣で、特許侵害を肯定する方向に働く場合もあると思う。


それは、上記の事例と逆に、実際に製造を行っている下請けが実施権者(再実施許諾権なしの実施権者)または先使用権者だが、発注者は何らの権利をも持っていない、という場合だ。


この場合も、もし下請けが発注者の単なる手足で一機関として行っているだけならば、上記の論理を貫徹すれば、製造=実施しているのは下請けではなく発注者だと評価すべきとなり、発注者は特許侵害となる、というのが論理的帰結だろう。


ただ、実際には、下請けが実施権者(再実施許諾権なしの実施権者)または先使用権者である場合、その下請けの業者はそれなりの実績や製造ノウハウを蓄積しているはずなので、発注者が強い指揮監督を及ぼすことはなく、したがって下請けが発注者の手足で一機関だという場合には当たらない、という場合がほとんどだろう。


よって、上記の実際に製造を行っている下請けが実施権者(再実施許諾権なしの実施権者)または先使用権者だが、発注者は何らの権利をも持っていないという場合に、上記の論理が適用されて、発注者が特許侵害になってしまうということはほとんどないだろう(つまり、事実認定の問題で妥当な結論に導ける)、と思う。





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2009年12月26日

ホリエモン、ゼロからの出発?



2009/12/25 asahi.com 堀江元社長、旧ライブドアと和解 208億円相当支払い



ライブドアグループの持ち株会社「LDH」(旧ライブドアホールディングス、東京都新宿区)が、証券取引法(現・金融商品取引法)違反の罪で一、二審で実刑判決を受けた堀江貴文元社長(37)=上告中=ら7人に約363億円の損害賠償を求めた訴訟で25日、堀江元社長との和解が東京地裁(菅野博之裁判長)で成立した。LDHによると、堀江元社長が約208億円に相当する株式などを同社に引き渡すとの和解内容。



LDHが上の記事の中でコメントしていた「引き渡しを受ける資産(=約208億円)は堀江氏の資産のほぼすべてに相当する」については、隠し資産があるはずだという見方が2chなどでは多いようですが、それはともかく、今回208億円もの大金で和解したのは最高裁に係属中の刑事裁判で執行猶予を得たいという狙いもあるのかも知れませんね(208億円を支払うなど既に社会的制裁を受けていると主張して)。


ホリエモンのブログは昔からたまに見てるのですが、硬軟の多様な話題を本音で語るのがこの人の持ち味で、逮捕前と逮捕・起訴後の今とでそれほど主張を変えているとは思えず、それなりに正直な人柄ではないかなと勝手に想像しています。


これだけ好き嫌いが分かれてる人も珍しいですが、しぶとそうだし(笑)、いろんな才能を持っている人なので、文字通りゼロからの出発をして、新しい生き方を示して欲しいなと思います。


追記: 上記の208億円の内訳は、堀江氏が保有するライブドア社の全株式(約181万株、約40億円相当)、同社から支払いを保留されていた株式配当金(約146億円)の請求権など、とのこと。


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2009年12月25日

専門家の競争激化と職業倫理



2009.12.07 asahi.com 債務整理ビジネスに「悪徳弁護士も」対策協など批判



決議は「都市圏を中心に弁護士らの債務整理広告が氾濫(はんらん)しており、多重債務者の窮状につけ込んで集客している」と批判。弁護士会などの団体によるもの以外の弁護士・司法書士、事務所の単独の広告を禁じるよう求めた。


日本司法書士会連合会も「自らの利益追求のみに走る弁護士や司法書士が一定数存在する」と認め、指針作りに乗り出している。



サラ金消費者が利息制限法の上限利率を超えて業者に支払った過払い利息の返還に関する最高裁判決(平成18年1月13日)が出て以降、弁護士や司法書士業界に「特需」が発生し、最近はピークを過ぎたようですが、この間、マス広告で多数の顧客を集めて大量の事件を定型業務的に処理する事務所が現れ、中には悪徳業者といえるような事例もあるということで、上の記事のような全国クレジット・サラ金問題対策協議会の決議に至ったようです。


上の記事はこちらのブログ(言語空間+備忘録)で知りました。


こちらのブログの意見を読んで、特にその中の(終わりに書かれてあった)専門家の競争激化と職業倫理の部分を読んで少し考えたことを、以下に記します。


弁護士、司法書士、医師、弁理士などの専門家の職業倫理についての私の実感としては、競争や広告そのものが職業倫理を失わせるということはほとんどないと思います(高額の広告代が払えなくなって借金して、悪事に手を染めるということなども少しは有るかもしれませんが)。


むしろ、競争があまり無かった昔の方が、職業倫理に反する事例は比率としては多かったのではないかと思います。ただ、それが表に出難かったのではないでしょうか。


まず、もともと職業倫理のある専門家なら、競争が激しいかどうかに拘わらず、職業倫理に沿った仕事をすると思います。


では、もともと職業倫理に乏しい専門家はどうか。


この場合、競争が激しくなかった昔は、専門家の力が強く、顧客の力が相対的に低かったので、顧客を軽く見て、倫理的に疑問のある内容の仕事をする例(特に、悪質だが違法とまでは言い切れないグレーのケース)は、かなりあった、というか、少なくとも「やりやすかった」し「やっても表に出難かった」と思います。


これに対して、最近は、顧客の力が相対的に強くなったため、もし職業倫理に反する仕事をすると、顧客の側としては、弁護士会などに懲戒請求をしたり、損害賠償の訴訟をしたり、ブログに書いたり^^; します。つまり、容易に表に出ますので、倫理に反する仕事が「やり難くなった」のは確かと思います。


それは医療業界を見れば明らかで、最近のインフォームド・コンセントやセカンド・オピニオンにしても、患者の力が相対的に強くなったからこそ、普及してきたのではと思います。


要するに、専門家の端くれとして思うには、専門家に職業倫理に沿う仕事をさせるために最も有効な方法は、顧客の力を相対的に高めること(=専門家の力を相対的に弱くすること)だと思います。そのためには、競争の激化、インターネットの活用(情報収集やクチコミ評価)などが有効な手段になるだろう思います(私も医者にかかるときは顧客として事前の情報収集などを心掛けています)。


それから、消費者契約法という民法の特別法があって、これは、エステ、通信講座、保険、病院などの様々な事業者に対して消費者を保護する(例えば、事業者の不実告知に基づいて契約をしたときは契約を取り消して支払った費用を返還させる、消費者に一方的に不利な契約条項を無効とする)ために活用されていますが、弁護士などに依頼した消費者(一般個人)の保護のためにも適用され得ると思います(弁護士なども同法の「事業者」に含まれると思いますので)。





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2009年12月24日

特許法2条3項の実施(「若しくは」と「又は」)



「実施」の定義を定めた特許法2条3項1号の文言については、ずっと疑問に思っていたことがありました。


特許法2条3項1号の条文では、物の発明の実施とは、


「生産、使用、譲渡等、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出」だとしています。


ここの「輸出」と「輸入」の間の「若しくは」が入っている理由は何か、「若しくは」が入ったために何がどう違ってくるのか、が昔からよく分かりませんでした。


「若しくは」は「又は」より低いレベルで使うということは知っていましたが、それでも、この条文のように、


「生産、使用、譲渡等、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出」とするのと、この中の「若しくは」を除いて、


「生産、使用、譲渡等、輸出、輸入、又は、譲渡等の申出」とするのとで、何か違ってくるのか、よく分かりませんでした。


それで、あるとき、弁理士向けの電子掲示板で、このことを質問してみました。


すると、詳しい人から、次のような答えが帰ってきました。


それによると、


「若しくは」を除いて、


「生産、使用、譲渡等、輸出、輸入、又は、譲渡等の申出」とすると、


「生産、使用、譲渡等、輸出、輸入、又は、譲渡等」が「の申出」に係ると解釈されてしまう余地がある。


これに対して、


「若しくは」を入れて、


「生産、使用、譲渡等、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出」とすると、


「生産、使用、譲渡等、輸出若しくは輸入」と「譲渡等の申出」とが並列になるため、


「生産、使用、譲渡等、輸出、輸入、又は、譲渡等」が「の申出」に係ると解釈されてしまう余地が無くなる。


だから、「生産、使用、譲渡等、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出」とすることが必要なんだ、という答えでした。


聞いてみるともっともなんですが、これで、私も、やっと、納得できました。


親切な人が多いですね^^


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2009年12月21日

店舗で得意客を検知して知らせるシステム



2009/12/20京都新聞の記事:顔認証で特定人物検出 オムロン、接客向上や防犯に活用



特定人物の顔をリアルタイムで検出して知らせる業界初のシステムをオムロンが開発した。防犯や接客サービス向上に活用できるといい、小売店やホテル、福祉施設など向けに関連機器を来年1月18日に発売する。



顔認識システムは既に、空港で旅行者の顔を撮影して犯罪者の顔写真データベースと自動照合してテロ犯人などを検出する目的などで導入されていますので、店舗の得意客を判別することくらいは容易なことでしょう。


これが利用されると、お客の側も、しばらくぶりに行ってみたら忘れられてたなどのちょっと寂しい思いをしなくて済むようになるかも知れませんね^^;


万引き常習者やクレーマーの顔を記憶しておいて、そういう人たちが来店したら直ちに検出し警報を出して店舗側が警戒態勢を敷くという使い方はニーズが強いとは思いますが、プライバシー保護との関係で問題もありそうです。


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2009年12月18日

ライセンス契約と特許権侵害・商標権侵害



三村量一・元知財高裁判事の講演記録が「パテント」2009−11号(日本弁理士会発行)に載っていて(112頁)、その中に、ライセンス契約と侵害の話が少しだけ出ていたのを読んで、それを元に考えたことです。


一般の契約、例えば家電製品などの卸売又は販売契約に基づいて購入した商品が不良品だったので損害が生じたという場合は、契約当事者の一方が他方に対して損害賠償を求めて提訴することがある。


この場合は、原告は、契約の債務不履行に基づく損害賠償請求と不法行為に基づく損害賠償請求とのどちらで行っても良いとされている(請求権競合説=判例通説)。そして、このような場合、実際には債務不履行で行くことが多いが、それは債務不履行の方が帰責事由(≒過失)の証明責任が信義則上転換されている(判例)などの点で原告有利だからだ。


これに対して、特許や商標権のライセンス契約がなされている場合において、もしその契約不履行に基づく損害賠償請求と特許侵害又は商標権侵害(不法行為の一形態)に基づく損害賠償請求との請求権競合が認められるなら、一般の契約の場合とは逆に、契約不履行責任を追及するよりも、特許侵害又は商標権侵害責任を追及する方が圧倒的に有利だろう。なぜなら、特許侵害又は商標権侵害を追及する場合は、特許法などの規定により、過失が推定されるし、損害額の算定規定などがすごく充実しているから。


しかし、特許や商標権のライセンス契約がある場合、契約違反があったとしても、特許や商標権の侵害が成立する場合はほとんどないのではないだろうか。


なぜなら、特許や商標権の侵害は「許諾(契約)なく特許や商標を実施・使用すること」なので、ライセンス契約の違反(例えばライセンス料の不払いや商標の使用条件となる商品の品質を満たしていないなど)があっても、ライセンス契約が存在する限りは、そして、ライセンシーの行為がライセンス契約が一応はカバーしているものである限りは、「許諾(契約)なく特許や商標を実施・使用すること」にはならないと思われるからだ。


例えば、商標権のライセンス契約の中で、商標を使用する商品を「菓子」とし、その菓子は○○という原料を含むものとするという使用条件が規定されていたが、ライセンシーがこの使用条件に反して「○○という原料を含まない菓子」に商標を使用したという場合、ケースによるとしても、多くは、一応は「ライセンス契約(許諾)に基づく使用」だとして商標権侵害にはならない(契約違反になるだけ)と思う(なお、「菓子」以外の「野菜」などに使用したら、契約がカバーしてる範囲ではないので、商標権侵害になるだろう)。


それは、ライセンシーが前述のような使用条件に反して「○○という原料を含まない菓子」に商標を使用した場合でも、一応は「ライセンス契約(許諾)に基づく使用」としてライセンス料は発生すると思われることからも、言えるだろう。


この場合は、その使用条件(契約条項)に違反した使用に対してライセンス料を請求すると共に、使用条件に違反した点については契約責任に基づいて+αの損害賠償を請求するしかないのでは、と思う。


まぁ、これは、知財だけに特殊なことではなく、一般のアパートなどの賃貸借契約などでも同じだろう。例えばアパートに勝手に同居人を入れたなどの使用条件に違反した場合に、その違反した期間は「契約に基づく使用」ではないから契約上の賃料は発生しない、ということにはならないだろう。この場合は、賃料は発生し、使用条件違反の点は別途損害賠償をプラスする、というだけだろう。


ライセンシーが使用条件に違反している場合に、権利者(ライセンサー)が侵害を主張したいなら、さっさと催告して契約を解約するべきで、解約した後なら「許諾(契約)なく特許や商標を実施・使用すること」に該当するので侵害に基づく損害賠償や差止めを請求することができる。


以上は当事者間の話だが、第三者に対する関係も同様だろう。


第三者に対する関係では、商標権が「消尽」しているかどうかという問題の立て方になるだろう。


つまり、前述のような「ライセンスの使用条件となっている○○という原料を含む菓子」ではない菓子に商標を付した商品(商標の契約上の使用条件に違反した商品)を、ライセンシーから卸売してもらって販売している小売業者=第三者に対しては、契約当事者ではない(契約に基づく主張はできない)ので、権利者としては商標権侵害を主張するしかないが、ライセンシーの行為が一応は「ライセンス契約(許諾)に基づく使用」であり商標権侵害ではないならば、そのラインシーから譲り受けた時点で商標権が消尽しているので、権利者がその小売業者に対して商標権侵害を主張することはできない、と思う。


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2009年12月17日

東芝の録画機能付き液晶テレビ「CELL REGZA」のCM判定技術



前回のエントリで述べた、日経エレクトロニクス(2009/12/14)の、東芝が2009/12に発売する録画機能付き液晶テレビ「CELL REGZA」の記事を読んでの感想ですが、前回の「超解像」以外に、録画したテレビ番組中の「CMの部分」を判定・抽出する技術が印象に残りました。


この「CM判定」技術は、録画した番組を再生するときに、番組の本編とCMとの音量差を自動調整する(おそらく、CMの音量がもともと大きいので小さくするんでしょう)ために、録画した番組の中からCM部分だけを区別して抽出する、というものです。


この技術では、録画した番組の中からCMだけを区別して抽出するために、番組本編とCMとの境界(又は、CMとCMとの境界)にある無音部分(つまり、一つのCMの最初と最後にある無音部分)を検出し、その2つの無音部分の間の時間が15秒かどうかを判定し、15秒である場合は、その部分はCMだと判定する、という手法を採用していました。


このようなCM判定技術は、CMスキップ機能(再生時にCMを早送りしたり再生させない機能)などでも使われ得るでしょうし、かなり昔から在るのかも知れません(CMスキップ機能そのものは10年以上前からあり、その方式も複数あるようで、当初はモノラル番組の中からステレオ音声の部分だけをCMだと判定・抽出してスキップするという方式などが採用されていたようです)。


この記事で紹介されていた「初めの無音部分と後の無音部分との間隔が15秒かどうかでCM部分かどうかを判定する」という手法は、技術的には極めて簡単なものですが発想法が斬新で面白いという意味で「発想力の発明」(発想力が決め手になる発明)と言えるでしょう。


少なくともこのCM判定の発明は、発想が面白いので進歩性はあったのではと思います(どこかの会社が特許を取っているのか、取っていても消滅しているのかなどは調べてません)。


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posted by mkuji at 01:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 発想力の発明

2009年12月15日

東芝の液晶テレビ「CELL REGZA」の超解像技術



日経エレクトロニクス(2009/12/14)に、東芝が2009/12に発売する液晶テレビ「CELL REGZA」の記事が載っていました。


この記事を読んで、Cell(ソニー・東芝・IBMがソニーのゲーム機用に共同開発した、複数のCPUコアを持つマルチコア型のマイクロプロセッサ)により実現したという「超解像」の技術が印象に残りました。


この超解像処理(これには幾つかの処理があるのですがその中の「自己合同性型」処理)では、「映像の同一フレーム内で輝度信号が近似したエッジ部の領域を抽出し、それらを重ね合わせて見掛け上の解像度を高める」と、この記事には書かれていました。


この文章だけだと短くて良く分からないのですが、おそらく、一つの映像の中で、輝度信号が近似のパターンになっている部分を何個か抜き出して、それらを重ね合わせて互いに補い合わせることにより、その部分の解像度を高めるという処理を、一つの映像内の各部分について繰り返していく、というものでしょう。


下図はこの記事に載っていたものですが、これを見ると、元の画像と超解像処理後の出力画像との違いがはっきり分かりますね。


f:id:mkuji:20091213005947j:image


この超解像を使うとYouTubeなどのネット画像をテレビの大型画面でも違和感なく見ることができるでしょうね。


また、超解像とは違いますが、Cellを使って通常の2次元映像を3次元(3D)映像に自動変換する技術も開発しているようです。


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2009年12月12日

金融機関の高額賞与に特別税



2009/12/12毎日jp:フランス:金融機関の高額賞与に特別税 英国に追随へ



 フランスのサルコジ大統領は11日、ブリュッセルの欧州連合(EU)首脳会議後の記者会見で、銀行など金融機関の高額賞与に特別税を課す方針を表明した。 英政府が既に、2万5000ポンド(約360万円)を超える賞与を支払う銀行には、超過額の50%相当を納税させる方針を示しており、フランス政府も追随した形。同大統領は「ドイツ政府も前向きだ」と述べ、各国政府に共同歩調を働き掛けていく方針を示した。 会見で同大統領は「例外的、一時的な措置」であることを強調。「課税は懲罰ではなく、(賞与の抑制を促し)銀行の資本を強化するための措置だ」と述べた。



サルコジ大統領は「課税は懲罰ではなく、(賞与の抑制を促し)銀行の資本を強化するための措置だ」と言ってますが、公的資金による救済が行われた銀行業界で高額の賞与が支払われることへの国民の強い反発が背景にあると他の記事にありました。


金融業界に限らず、テレビ局などのメディア業界やそれに関わる広告業界などでも、製造業などと比べると高額の給与や賞与が支払われているのは何故なのか、例えば同じ経理の仕事をしているのに、メーカーと金融・マスコミ・広告という業界の間で給与に大きな開きがあるのは何故なのか、素朴な疑問があります。


例えば、日本では公共物である電波の周波数が国からテレビ局に不当に安い使用料だけで割り当てられているという批判がありますが、そうだとすれば、その分だけ国民財産からテレビ局へ所得移転が行われている、それがテレビ局社員の高額給与の原資の一つになっているのでは、という解釈も成り立つと思います(なお、最近の、欧米諸国で行われている電波オークションを日本にも導入したらという議論は、理論的にはテレビ局などへの既存の割り当て枠をもオークションの対象とすべきだが、それはさすがに政治的に無理なので、これからの新規の事業者への周波数割り当てについてだけ導入しよう、という議論のようです。参考)。


少し前から、派遣・契約社員の経済的困窮(正規社員と非正規社員の間での待遇格差)の関係で、同一企業内での同一労働同一賃金が主張されていますが、複数の業界の間での同一労働同一賃金の実現も検討した方がよいのではと、この記事を見ながら感じました。


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2009年12月11日

電子書籍端末



2009/12/10 日経記事:米アップル、電子書籍対応の新型端末 10年春にも発売



 米アップルが来年春にも高機能携帯電話「iPhone(アイフォーン)」より画面が大きく、電子書籍にも対応する新型端末を発売する見通しとなった。・・・小型パソコン「ネットブック」並みの10.1型の液晶画面を備え、「アイフォーン」同様にタッチ操作が可能という。・・・電子書籍端末の全世界累計の普及台数は約300万台で、アマゾン・ドット・コムの「キンドル」が独走。「iPod」で楽曲流通の主役の座をCDから奪ったアップルだけに、電子書籍端末でも市場の勢力図を塗り替える可能性がある。(シリコンバレー=岡田信行)



私は最近は本はほとんど買ってなくて(専門書はたまに買いますが)、買いたいなと思った本はアマゾンでカスタマレビューを読んで、それで「なるほどねぇ」ともう何だか読んだ気になってしまって、そのまんまというパターンです^^;


どうも物体としての本を買うことに躊躇してしまう(保管や処分などから?)という面もあるのかなと思います。電子書籍端末になれば、書籍代(データ料)も安くなるでしょうし、手軽に本を読んでみようという気になるかもしれないとも思います。


ちょっと調べてみたら、電子書籍端末は2003年夏に日本でパナソニックが「シグマブック」という2画面見開き型の読書端末を出したのが初めで、その翌年の2004年春にソニーも日本で「リブリエ」を出しましたが、どちらも少し話題になっただけで売れないまま撤退したようです(ソニーは2006年秋から米国で発売した「リーダー」を今も販売中)。


その日本で初めて発売されてから4年後の2007年秋に、アマゾンが米国で売り出した「キンドル」(通信ダウンロード機能付き)が、今、あれだけ売れているというのは皮肉ですが、日本と米国では市場環境が違う(日本ではケータイが便利になり過ぎてて読書専用端末の居場所がない)という面もあるようです。


それが、今度はアップルも来春から新端末を掲げて参入となると、もう勝負あったという感じですかね。


どうも、塁には出るが点に結びつかないという「ちぐはぐさ」が最近の日本の電機メーカーに目立ちますが、実力の問題もあるとしても、運が悪かったという面も確かにあるのかな〜と思います。


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2009年12月10日

特許法2条3項の「譲渡等の申出」と契約成立要件としての「譲渡等の申込み」



特許法2条3項は「実施」の一形態として「譲渡等の申出(譲渡等のための展示を含む)」を定めている。


この「譲渡等の申出」について、例えば「注解特許法(上巻)」は、譲渡又は貸渡しのための展示などは含むが、観客に見せるだけの単なる博覧会(商談会等を兼ねるものを除く)や客寄せのための展示は、これに含まれない、としている。


つまり、譲渡等(販売やレンタル)に繋がるような展示その他の申出ということになる。


とすると、小売店における商品の陳列や商談会における商品の展示はこれに該当する。


それ以外に、小売商品の広告チラシの配布、DMの郵送、ネット上での広告(特にショップのサイトにリンクしている広告)なども、本には書かれていないが、おそらく含まれるだろう。


条文では「譲渡等の申出」となっているので、「譲渡等の申込み」(譲渡等の契約の成立のために必要な一方当事者の意思表示)とは違うのだろう。


「申込み」とは、承諾があれば契約を成立させるという意思表示で、「申込みの誘引」(「従業員募集」の広告などの、他人の申込みを誘うもの)とは異なる。


一般に、実店舗で値札を付けて商品を陳列することは「売買契約の申込み」に当たるが、通販でカタログを配布すること(又はネット上でカタログを掲載すること)は「申込みの誘引」だとされている(通販の場合はユーザーが注文しただけで契約成立とすると在庫が足りなくなるなどの不都合があるから)。


特許法2条3項の「譲渡等の申出」は、「申込み」と「申込みの誘引」との両方を含む概念だろう。


こういう「販売の申出」(「譲渡等の申出」は分かり難いのでこう言います)に対しては、差止め請求ができる。


損害賠償請求もできるが、それを実際にやる場面は限られるだろう。なぜなら、「販売の申出」だけでは特許権者の売上の減少(逸失利益)があったと証明することが難しい、「販売の申出」の後には「販売」があるからその「販売」をつかまえて損害賠償請求すればよい、と思うので。


だが、「販売の申出」に基づいて損害賠償請求をしなくてはならない場合もあると思う。


私見だが、例えば、特許が切れる前の数ヶ月間だけ、ネット上で販売の申出(「販売の申込み」ではなく「申込みの誘引」)をしておき、販売契約の成立は特許期間満了後にもって行く、という場合だ。


つまり、ネット上で、特許期間が満了する数ヶ月前から特許権利者の商品と同じ商品を安値で販売しますと告知(申込みの誘引)して、多数のユーザーから、その「購入の申込み」をネット上で募集しておく。この段階では、ネット業者は「申込みの誘引」をしているだけなので、ユーザーからの応募(購入の申込み)があっても売買契約はまだ成立していない。そして、特許期間が経過してから、販売する側が「販売の承諾」をして売買契約を成立させる。この間(特許が切れる前の数ヶ月間)、特許権者の商品が買い控えに陥って、その売上の減少(逸失利益)が生じた、とする。こういう場合は、「販売の申出」(申込みの誘引)を侵害行為として、これに基づく損害賠償請求ができるのではないだろうか。


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2009年12月08日

みずほ証券誤発注事件の東京地裁判決



毎日jpの記事:みずほ証券誤発注:賠償訴訟 対応怠り「重過失」 東証に賠償命令−−東京地裁判決から。



 株の誤発注で損失が拡大したのは東京証券取引所(東京都中央区)のシステムに問題があったためとして、みずほ証券(千代田区)が東証に約415億円の賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は4日、約107億円の支払いを命じた。松井英隆裁判長は「異常な売買状況を認識し得た時点で、売買停止措置を取るべきだった」と賠償責任を認定した。(中略)


 続いて、「故意か重大な過失がない限り免責される」との東証の規定に該当するかを検討。誤発注から5分29秒後にジェイコム株の取引成立数が発行済み株式数の3倍を超える異常な状況にあり、東証は決裁や操作に要する時間を考慮しても、その約1分半後には売買停止措置を取るべきだったと指摘。「市場への影響の重大さを容易に予見できたのに、漫然と見過ごした。故意に近い著しい注意義務違反」として重過失に当たると判断した。



この東京地裁判決によると、誤発注の取引開始から約7分以降は、誤発注による約定株式数が発行済み株式の3倍を超えており、東証はそのような異常な状況を認識しており、売買を停止することができたのにそれをしなかったのは東証に重過失があるとして、その時点以降に生じた損害の7割の賠償責任を東証に認めました。この7分経過以前の損害については、重過失はない(軽過失があるだけ)として責任を認めませんでした。


もし、「故意か重大な過失がない限り免責される」との東証の規定が無かったら、誤発注による取引開始から約7分経過する以前の損害についても、軽過失はあるとして、過失割合により例えば損害の3割くらいの賠償責任が認められた可能性はあるでしょう。


それにしても、「1株を61万円で売却」を「61万株を1円で売却」と入力ミスしたなんてのは、昔のアナログ時代なら、TVドラマなどで、「新入社員の微笑ましいミス」で、「ドジで人間味のあるヤツ」というような暖かい目線で描かれててもおかしくなかったと思います。


それが、デジタル時代になって、昔なら微笑ましかった?ミスやドジが一瞬にして取り返しのつかない致命傷となってしまうとは、恐ろしい世の中になったもんだと思います(まぁ、裁判所によれば「重大な過失」とされてますが)。


これは、一般の会社員も「プロ」としての仕事を要求される時代とも言えるのでしょうね。


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posted by mkuji at 13:01| Comment(4) | TrackBack(0) | 雑談

2009年12月07日

理系の論理と文系の論理



仕分け結果で公開議論 行刷会議が検討、要求官庁側との日経記事から一部引用。



 政府の行政刷新会議(議長・鳩山由紀夫首相)は11月に実施した2010年度予算の概算要求の無駄を洗い出す「事業仕分け」の結果を巡り、要求官庁側と公開で議論する場を改めて設ける方向で調整に入った。国会議員の仕分け人らが「廃止」などの判定の根拠を説明し、要求側に反論する機会を与える形で、週明け以降の開催を想定する。仕分け結果には科学者らも反対していた。



特許の仕事はもともと理系(工学)と文系(法律)の間を行き来するものですが、理系が使う論理と文系が使う論理とに違いがあるとは思えませんし、あってはならないと思います


理系と文系の両者を結ぶほぼ唯一のものが論理ではないかと思います。


スパコン(スーパーコンピュータ)予算の見直し結果などについてノーベル賞受賞の科学者などからの批判も出ているようですが、同じ論理という土俵の上で、科学者、政治家、官僚などがさらに議論して、共通の認識をもった上で、妥協できる結論に至るようにして欲しいと思います。


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2009年12月06日

著作権に関する日経記事(ウィニー事件とロクラク事件)



2009/11/30付け日経新聞の法務欄の著作権の記事「ウィニーに逆転無罪の高裁判決/著作権強化に冷や水?」を見て、ちょっと気になってたのですが、こちらの企業法務戦士の雑感で既にいろいろ書かれていました。


つまり、このブログに書かれてるのですが、ロクラク事件はカラオケ法理の否定ではなくカラオケ法理を前提としたものではということです。まぁ、僕も、ロクラク事件、詳しく見てませんが、カラオケ法理の否定というよりその限界を画定したというものではと思います。


ところで、この日経記事の中に、次のような文章があります。



カラオケ法理は、サービス提供者の「間接侵害」を強引に「直接侵害」に転換し、その行為を差し止める。なぜこのような考えをとるのか。現行の著作権法では利用者による直接侵害には差止めと損害賠償を求められるが、サービス提供者による間接侵害には賠償請求しかできないからだ。



この部分の「間接侵害」という表現に少し違和感を持ちました(私だけかもしれませんが^^;)。特許法と比較して、「間接侵害」という言葉がかなり広い意味で使われるような気がしたので(特許法では101条で「間接侵害」という言葉は、特定の行為として、かなり狭く定義されています)。


ちょっと調べてみると、著作権法では「間接侵害」という言葉について明確な定義がまだないようです。こちらに出ていました。こちらによると、「間接侵害」とは、明確な定義はないが、直接的侵害行為以外の行為態様による著作権侵害事象(特に直接的な著作権侵害を援助・助長・惹起し又はこれに加担・寄与する行為)というような意味に使用されているようです。また、こちらによると、著作権法には特許法101条のような間接侵害の規定がないので、文部科学省の審議会でそのような規定を創設することに向けての議論がなされていたようです。


著作権法では、現状、「間接侵害」(上記のような広い意味)の一形態である「幇助・教唆」については、損害賠償だけで、差し止めは認められていません(著作権法112条。まぁ、これは特許法でも同じですね)。同法113条の侵害と見做される行為(これも「間接侵害」の一つの形態のような気がしますが)は差止めが認められています。


ウィニー事件では、大阪高裁は、「間接侵害」(上記のような広い意味)の一形態である「幇助」について、「ウィニーが著作権を侵害する手段に使われる可能性をソフト開発者が認識していただけでは、幇助犯にはならない」としました。


他方、ロクラク事件(日本で録画したテレビ番組をネットで海外に転送し、海外で利用者が鑑賞するサービスを提供する運営会社を、NHKと民放9社が著作権侵害で提訴した事件)については、知財高裁は、利用者の行為は個人的にテレビ番組を録画して楽しんでいるのだから私的利用のための複製(著作権法30条1項)として適法だと判断しました。つまり、カラオケ法理が成立しない(サービス提供者は利用者ではない)というだけでなく、直接の利用者の行為が適法なのだから被告(サービス提供者)側の教唆・幇助も成立しない、としたのがロクラク判決なのでしょう。


このロクラク判決(平成20年(ネ)第10055号平成21年1月27日知財高裁判決)の「幇助」を否定した部分(最後の部分)、末尾に引用しておきます。


「小括


以上のとおり,被控訴人らが主張する各事情は,いずれも,控訴人が本件複製を行っているものと認めるべき事情ということはできない。加えて,上記(1)のとおりの親子ロクラクの機能,その機能を利用するために必要な環境ないし条件,本件サービスの内容等に照らせば,子機ロクラクを操作することにより,親機ロクラクをして,その受信に係るテレビ放送(テレビ番組)を録画させ,当該録画に係るデータの送信を受けてこれを視聴するという利用者の行為(直接利用行為)が,著作権法30条1項(同法102条1項において準用する場合を含む。)に規定する私的使用のための複製として適法なものであることはいうまでもないところである。そして,利用者が親子ロクラクを設置・管理し,これを利用して我が国内のテレビ放送を受信・録画し,これを海外に送信してその放送を個人として視聴する行為が適法な私的利用行為であることは異論の余地のないところであり,かかる適法行為を基本的な視点としながら,被控訴人らの前記主張を検討してきた結果,前記認定判断のとおり,本件サービスにおける録画行為の実施主体は,利用者自身が親機ロクラクを自己管理する場合と何ら異ならず,控訴人が提供する本件サービスは,利用者の自由な意思に基づいて行われる適法な複製行為の実施を容易ならしめるための環境,条件等を提供しているにすぎないものというべきである。」


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2009年12月05日

メディアの生きる道?



新聞を初めとするメディアの苦境について、池田信夫さんがアゴラの記事で分析しています(以下に引用)。



これはメディア産業にとって、悪い話ばかりでもありません。新聞のコストの4割は販売経費であり、残りの半分以上も印刷機などのインフラや管理部門で、記者は社員の1/4程度しかいない。その半分近くも整理部などの間接部門で、記事を書く記者は1000人もおらず、そのほぼ半分が地方支局に勤務しています。ウェブベースに移行すれば、インフラのコストはゼロに近く、レイアウトに労力を費やす必要もなく、もちろん販売経費はゼロです。記者の人件費だけなら、ウェブメディアで回収できる可能性はあります。



上の記事からは、要するに、新聞の全コストの中の「記者(この中で、レイアウト担当などの、記事を書かない記者は半分)の人件費」はざっくり1/4くらい、「記事を書く記者の人件費」は1/8くらいなので、記事を書く記者だけにすればWebベースに移行しても回していけるということのようです。


ただ、そうなると、記事を書く記者以外の7/8の社員、輪転機などの設備、販売・宅配網は必要なくなり、売上げも1/8くらいになるのでしょう。


少し前から言われている4割経済に現実味を感じますね。


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2009年12月02日

私的録画補償金の支払いを求めてSARVHが東芝を提訴



私的録画補償金の支払いを求めてSARVH(私的録画補償金管理協会)が東芝を提訴したという記事は既に11月11日頃から沢山出てて、デジタル専用DVD録画機(ダビング10で複製が制限されたデジタル放送のみを受信できるDVDレコーダ)が著作権法30条2項及び政令に指定された対象機器に含まれるか、メーカーは「協力義務」として徴収代行までしなくてはならないのかSARVHに支払って下さいという紙を添付しておくだけでもよいのか、などが争点になっていて、小倉秀夫弁護士のブログなどで議論されているようだが、それは今はいい。


それよりも、あくまで個人的になんだけど、最近見た日経エレクトロニクス(2009/11/30)15頁の記事の中に、今回の訴状(代理人は有名な久保利英明弁護士)に記載されている請求金額として、「当該機種の2009年2〜3月分の出荷台数3万1091台に,出荷価格が不明なため補償金の上限金額である1000円を掛け,消費税155万4550円を加えた金額」とあったのに興味を持った。


「補償金」には消費税を付加して請求するんだなというのが。


通常、損害賠償請求のときの「損害」には消費税は付けないと思う。


補償金の場合は「売上げ」に準じるのだろうか。


特許法65条にも、出願中の行為に対して「補償金」を請求する権利が出てくるのだが、これは実質は損害賠償なので(特許権が成立してない期間の行為なので侵害ではないから「補償金」なのだが、特許権が成立した時点からは同じ行為が侵害となって「損害賠償金」となる)消費税は付けていないのではと思うがどうだろうか(裁判例を見ればすぐ分かることなんだけど・・・見てません^^;)。


まぁ、この辺は弁護士なら常識なのだろうが、弁理士にはいまいち分からないところだ。


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posted by mkuji at 01:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 著作権